低血圧なのでしょうか、シュラ様って。
起きたばかりの、このワンテンポずれたような仕草が何とも言えず色っぽくて、余計に胸がドキドキする。
そんな自分の心の動揺を誤魔化すように、私はキッと目を尖らせた。


「何故、怒っている?」
「お、怒るに決まってるじゃないですか! 目覚めたらシュラ様に抱き竦められていたなんて、そんな事、あって良い筈がありませんっ!」
「仕方あるまい。ココは俺のベッドだからな。」


こんな時なのですから、今日くらいは我慢してソファーで寝るとか、せめて客用寝室を使うとかしてくだされば良いものを……。
吃驚ですよ、ホント。
何から何まで驚きです、シュラ様。


「そうか客用寝室……、思い付かなかった。」


でしょうね!
ボケボケなシュラ様の事ですから、そう言うだろうと何となく想像は付いていましたよ!


「全く……。こんなトコロを誰かに見られたら、それこそ言い訳も出来ませんよ。」
「そうか? 別に言い訳の必要もあるまい。」
「ありますよ! 私は良いとして、シュラ様が困るじゃないですか!」


例の『彼女』に誤解されてしまったら、どうするおつもりなのかしら?
このような、ほぼ真っ裸に近い格好してベッドに二人でいるなんて――。


「って、ええっ! 嘘っ! やだっ! 何で、こんな格好で?!」
「まさかアンヌ、今頃、気付いたのか?」
「や、ちょっと、やだ、シュラ様っ! どうして何も言ってくださらなかったんですかっ?!」
「いや、知ってるのかと思って……。」


パニックになりながらも慌ててタオルケットを引き上げ、その中に身体を隠した私は、目から上だけを端から出して、目の前のシュラ様をキッと睨み付けた。
シュラ様はといえば、相変わらず寝惚け気味に目を細めたまま、私を見ている。
そう、私は服を着ていない状態、つまり下着だけの姿でベッドの上に起き上がり、シュラ様と会話を続けていたのだ。
何も着ていない事にも気付かず、のうのうと!


「いや、寝ている時にうなされていて、苦しそうだったんでな。勝手に脱がしてしまったのだが……。」
「しゅ、シュラ様がですかっ?!」


熱を出して寝込んでいたとはいえ、服を脱がされて気付けなかったなんて、不覚だわ。
しかも、脱がされたという事は、シュラ様にばっちり色々と見られた訳で……。
何だかもう、立ち直れないかも。


「ついムラムラっときて、襲いそうになったが、流石に病人を組み敷くのは可哀想だろう。それで、我慢した。」
「ごほごほっ!」


が、我慢したって、何ですか!
私など襲って何があるって言うんですか!


顔を真っ赤にしたまま更に強くシュラ様を睨み付けるが、彼は何処吹く風といった様子で平然とした顔をしている。
何処までが本気で、何が冗談なのか。
その区別が付かなくて、私はひたすら混乱し、シュラ様の鋭いような熱いような視線から逃れるようにタオルケットを頭からスッポリと被った。





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