愛しさの証を、その指に



薄っすらと明けゆく朝の光に包まれ、ゆっくりと目が覚めた。
冬の朝は、日の出が遅い。
もうこんな時間なのかと、まだ重い身体を起き上がらせようとして、ふと気付く。
腕の中にある、愛しい女の柔らかな身体に。


そうだ。
昨夜は――、いや、ホンの数時間前までは、この魅惑的な身体に埋もれ、甘い毒にも似た快楽に沈み込んでいたではないか。


任務明け、一週間振りに帰ってきた聖域。
偶然にか、それともクリスマスに合わせてなのか、同じ日に聖域へと戻って来た綾。
グラード財団の総帥として欧州を巡る女神に付き従っていた綾にとっては、一ヶ月振りとなる聖域だ。


相も変わらず、すれ違いにすれ違いを重ね、こうして俺達が共に過ごした最後の夜は、一体、いつの事だったか。
あれは秋の終わりだったか、冬の初めだったか。
正直、綾の全てに飢えていた昨夜の俺は、彼女が意識を手離そうと、どんなに懇願しようと、この心も身体もすっかり満たされるまでは、その華奢でいながら豊かに実った身体を、この腕から離す事が出来なかった。


「無理を強いてしまったな……。」


小さく呟き、腕の中の白い額に口付けた。
ピクリと一瞬だけ揺れる身体。
だが、目を覚ます気配はない。
仕方ないか。
それもこれも昨夜は激し過ぎた、燃え上がり過ぎたと、それを強いた自分でも思う程だった。


にも係わらず、腕に掛かる心地良い重みと、滑らかな肌の感触、そして匂い立つ肢体に、俺の心は再び抗い難い欲に支配されていく。
すっかり満足したつもりが、目の前の綾の無防備な寝顔に、また沸々と滾ってくるのだ。
愛しいと思えば思う程に。


ゆっくりと唇を滑らせ、額から瞼、頬へとキスを降らせる。
鼻の頭を小さく噛み、それでも目を覚まさない綾に少しだけ苛立ち、耳たぶを強めに噛んだ。
ビクリと跳ねる身体、だが、依然として目を覚ます気配はない。
そのまま耳に舌を這わせてジットリと舐め上げ、小さく身動ぎをした瞬間に、自分の身体をズラして、彼女を組み敷く。
そして、これから起こる事にも気付かず、未だ夢の世界を彷徨う愛しい綾に深い口付けを。


「んっ……。」


同時に、持て余していた両手を昨夜の情熱の痕が鮮やかに残る身体に滑らせて、その感触を十分に楽しむ。
未だ深い交わりの余韻が色濃く残る綾の身体は、少しの刺激にも敏感に反応した。
面白いくらいにビクリビクリと揺れて跳ね上がる身体。
まだ眠っているというのに、俺の手の動きに逆らわず正直に感じているのは本能なのか。
その中でも一番敏感な箇所へと指を潜り込ませてやっと、彼女はその重い瞼をゆっくりと開いた。


「……あ、や。……シュラ? 何、を?」
「何って、見ての通りだが?」


俺に組み敷かれたまま呆然と見上げる綾は、自分の置かれた状況を理解出来ていないのだろう。
力なく、その細い腕を俺の顔に向かって伸ばす。
が、直ぐに止めていた動きを再開した俺の指先や手の平や唇の感触に、伸ばし掛けていた手の先をブルリと震わせて、そのまま俺の肩に強く掴まった。


「やだ……。も、無理よ、シュラ。」
「そうは言ってもな。もう止められん。」
「あっ……。あ、あああっ!」


思わせ振りに右足を抱え上げ、見せ付けるように熱く滾った身体を沈み込ませる。
刹那、綾の唇から零れた嬌声は、朝の光を引き裂いて、静かな部屋の中へと響いた。
声を殺す癖の抜けない彼女だが、今は寝起きのせいか、いつもの抑制が効かずに奔放な声が上がる。


「ん、あっ! し、シュラ……、だ、駄目っ! んっ! あん、あっあっ……。」
「くっ、綾……。」


その艶かしい声に俺の中の欲は更に高まる。
もう何度も共に昇った快楽の極みへと向けて、俺の身体は力強く綾の内側に広がる熱い海へと漕ぎ出した。





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