うたた寝



「シュラ様が戻って来たわよ。」


彼が教皇様の元へ報告に来ていた姿を目撃した女官仲間の子が、そう教えてくれたのは、一時間も前の事。
二週間もの長い国外任務を終えて帰って来た彼に早く会いたくて、目の前の書類を躍起になって片付け、処理を終えて。
この一時間の間に数倍に膨れ上がったシュラへの想いを胸に、私は飛び出した教皇宮から見下ろす長い階段を駆け下りた。


だけど、辿り着いた磨羯宮には、シュラの気配どころか、他の誰の気配も感じられない。
リビングにもキッチンにも居ない。
シャワーでも浴びているのかと浴室の中を探しても、シュラの姿はない。
もしかして、疲れて寝ているのかも……。
そう思って、寝室を覗き込んだが、やはり彼は居なかった。


だが、雑に乱れた寝具は、少し前まで彼がそこに寝ていた事を裏付けている。
ベッドに横になったのは良いものの、寝付けなくて、結局、起きて何処かへ出て行ったといったところかしら。
潰れて斜めになった枕と、無造作に捲り上げられた寝具。
ちゃんと綺麗に直したりしないで、乱雑なまま放置。
こういうズボラなところが、とてもシュラらしいと思う。
執務や任務はキッチリしないと気が済まないクセに、自分の身の回りの事になると、テンで駄目なイイ加減さ。


私はいつの間にか身に付いていた習慣で、乱れたベッドを綺麗と直すと、その上に座った。
シュラがいないのなら、仕事に戻ろうかしら。
折角、早退してきたのに、彼が居ないんじゃ意味が無い。
会いたいと想う気持ちばかりが急いて、結局は会えなかった事にがっかりしながら、ポスッとベッドに横になった。


あ……、シュラの匂いがする。


この二週間、ずっと離れていた彼の、ホンの少しの汗と、愛用している香水の香りが入り混じった、どこか男臭い匂い。
僅か二週間だけだったのに、その匂いがとても懐かしくさえ感じられて。
私は枕に顔を埋め、シュラの存在を匂いで感じようと、目を閉じて大きく息を吸った。


――あ、……あれ?


そのまま、私はいつの間にやら眠っていたらしい。
次に目が覚めたのは、酷く息苦しさを感じたから。
上手く呼吸が出来ない、おかしい。


「ん……、んんっ。」


目を開ければ、視界いっぱいに広がるのは、大好きなシュラの端整な顔。
伏せた睫が頬に影を作り、何とも艶かしくて、思わず見惚れてしまいそう。
だけど、この自由にならない身体と、酸欠寸前の苦しさ。
それもその筈、ベッドの上に横になった私を、シュラが組み敷いていたのだから。


更には、延々と続けられる濃厚なキス。
圧し掛かる身体の重みはビクともせず、咥内を執拗に舌で好きにされて。
シュラに見惚れてる場合じゃないわと、私は彼の下でバタバタともがいた。


「んっ……、んんっ……、ぷはっ!」
「折角、良いところだったのに。何故、暴れる、彩香?」
「暴れるわよ! 当たりま……、えぇっ?! ちょっと何? ヤダ!」


ホンの少しシュラが身体を浮かせた隙に、僅かに身体を起こせば、ハラリと滑り落ちたのは私の衣服。
見れば、下着以外は左右に肌蹴られ、自分でも吃驚なセクシーな姿になっているじゃないの。


「や! 寝てる間に何しようとしてたのよ、シュラ!」
「何って、決まっているだろう、そんなの。部屋に戻ってみれば、二週間も会えなかった愛しい女が自分のベッドで『襲って下さい』と言わんばかりに寝ているとあれば、襲わない男などいる訳がない。こんな美味しいシチュエーション、黙って見過ごせると思っているのか?」


何を大真面目な顔で、そんなキッパリと言い切ってくれちゃってるんですか、シュラさん!
こんな真昼間っから、しかも、「おかえり。」とか「ただいま。」とか言い合って、ほのぼのした恋人同士の一幕もまだ済んでないのに、いきなりこういう展開なんですか?


「二週間も禁欲生活だったんだ。こんな良いトコまできて止めるなど出来んぞ。」


そう言って、鋭い眼差しの奥にギラギラと燃え上がる情熱を浮べ、シュラは私の両手首を掴むと、あっさりと再びベッドへと倒れ込む。
押し付けられた身体の重みが、これから起こる事の激しさと濃厚さを突き付けてくるようで、勝手に反応した私の全身がカッと熱くなっていくのが分かった。


「別に……、そんなに無理して我慢しなくても……。」
「悪いが、彩香以外の女を、抱きたいとも思わんのでな。」


それはそれは凄く嬉しい台詞には違いないけど。
そう言いながら、手を滑らせて器用に私の下着を脱がしていくシュラに抵抗する事も出来ない今。
この体勢、この状況で聞かせられても、「身が持つかしら?」と、ただただ溜息の素になるばかりだった。



手加減してよね、愛しているなら



「んっ! あ、あ、はっ……。あ、あぁ……。」
「はぁはぁ……。っと、次はバスルームで、だな。」
「や、無理。もう無理だから、勘弁して……。」
「そうか……。なら、もう一度、ココで。」
「やっ、そうじゃないから! 駄目、無理ぃ……。あ、シュラぁ、あ、あ……。」



‐end‐





激しくERO山羊さまでスミマセン。
二週間の任務で、すっかり欲求不満になっちゃったらしいです、ウチの肉食山羊さまはw
いやぁ、マイ誕記念にEROっぽい山羊さまとイチャイチャな話でも書こうかと思ったら、こんな山羊さま降臨で自分でも吃驚です^^
皆様、EROい山羊さまは、お好きですか?

2009.07.21



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