契り



「……クッ。」
「ん、あ……、ああっ、あっ、ああっ!」


元より口数の少ないシュラは、それを補うかのように、ベッドの中での愛情表現は濃厚だ。
まるで愛の言葉を囁いているかの如くに丹念に時間を掛けた愛撫と、何もかもが満たされ尽くすまでに激しい交わりを仕掛けてくる。
その行為の最初から最後まで、言葉など必要ないとでも言いたげに、何処までも情熱的。


そんな彼が今宵、いつにも増して執拗な攻撃を仕掛けてきた。
長く深いセックスの果てに、やっとシュラがその重い身体を横へと退けた頃には、私は息も絶え絶え、身動ぎ一つするのも億劫な状況に追い込まれていた。


「……日付が変わってしまったな。」
「ん……。」


カタリと微かな音に、横たわったままの私は、視線だけをシュラへと向けた。
水の入ったグラスを口元へと運ぶ彼は、前方の壁に掛けられた時計へと目を向けている。
釣られて眺めた壁時計。
時刻は零時を二十分程、過ぎていた。
この行為を始めた時には、まだ当然、日付の変わる前だったのだから、どれだけ長い時間、シュラと交わっていたのかと思うと、今夜の彼の執拗さには溜息が零れ落ちそうになる。


「いつの間にか、誕生日を迎えてしまっていたな。」
「……っ?! 知っていたの? 今日が私の誕生日だって。」
「当然だ。」


付き合い始めて、まだ日が浅い。
それに、自分の事をアレコレと喋って聞かせるのも、何だか煩わしい。
大体が無口なシュラに対して、私自身もお喋りな方ではない。
二人して何も話さず、黙ったまま同じ空間で同じ時間を過ごす事が、心地良い時も多くて。
だからこそ、お互いの過去の事も勿論、自分自身の事ですら、余り話した事がなかったのに。


「何処でどうやって……。」
「そんなもの、ちょっと調べれば直ぐに分かる事だ。」
「これだから聖闘士は……。」


普通の人ならば、調査に沢山の時間とお金を必要とするところを、この人達は、いとも簡単に調べ上げてしまう。
聖闘士、いや、聖域の情報網のスケールの大きさ、そして、細部に渡る細やかさは、私も内部にいる人間として良く知ってはいる筈だったけれど、それがまさか自分に向けられるとは思いも寄らないもの。
しかも、黄金聖闘士と言えば、桁外れな戦闘能力ばかりに目が向いてしまうけれど、知識の深さや、調査・探査の能力に於いても、白銀以下とは比べものにならない程に優秀なのだ。
目の当たりにすれば、もう溜息しか出てこない。


「他には何を知っているの?」
「彩香の事なら、何から何まで知っている。」
「過去の恋愛遍歴も?」
「それは知る必要のない事。今は俺の女だ。それだけで十分だろう。」


そこは気にならないの?
愛の行為はあんなにも濃厚なのに、私自身に対する執着は淡泊って事なの?
そこまで深く知る必要がないのは、その程度の関係だと割り切っているから?


「そうではない。彩香の過去を余り深く知ってしまえば、俺の身が持たなくなる。嫉妬というものはキリがないようだからな。」
「っ?! や、シュラ、ちょっと……。」


会話の途中で身を倒したシュラは、寝そべったままの私の上に、再び覆い被さってきた。
ただし、いつもとは違って、会話は途切れない。
淡々と言葉を紡ぎながら、首、鎖骨と唇を滑らせてはいても、その手はいきなり核心部へと潜り込んでくる。


「それにこの先、彩香が他の男を知る事はない。お前という女を独り占め出来るのだから、多少の過去には目を瞑る。」
「それって、シュラ……。あ、ああん! あ、あ!」


耳に飛び込んだ言葉の意味。
シュラが何を言わんとしているのか、快楽に溶け始めた頭が辿り着いた瞬間。
遠慮もなく強引に、彼が深々と入り込んできた。
然したる愛撫もなかったが、一度、絶頂を越えた身体は易々と、そして、敏感に奥まで受け止めて、甘くシュラを包み込む。


「そうだな……。これから毎年、彩香の誕生日は、こうして繋がり合ったまま迎えるというのは、どうだ?」
「どうだって……、あ、そんなの……、ん、あっ!」


彼の愛情表現は、情熱的なんて言葉じゃ納まらない。
この愛の大きさを、彼の滾る欲望の全てを受け止めるには、あと何夜、共に越えれば良いのか。
多分、永遠に終わりはないのだと感じて、私は凄まじい快感に飛びそうな意識の中、甘い痺れに震え、最高の絶頂へと昇り詰めた。



溶ける夜に交わす契りは



‐end‐





宣言通りの、自分への御褒美なERO山羊さまですw
愛の言葉を囁くよりも、アレな行為で愛の深さを伝えようとする我が家の山羊さまは、無意識ムッツリEROな男ですw
過去に別れたオナゴに、「エッチがしつこ過ぎる。」とか言われていたら良いよw

2015.07.20



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