自分が死んだということを、自覚させるためだったのかもしれない。
だが丹那は最初から、自分が死んだということを認識していた。
今さら、何をしたいのか。
この世界は何なのか。
丹那の過去がわかれば、何か手がかりにでもなるかと思ったが、何も得られない。
こんなんだったら、来なかった方がよかった。
茉樹がそう思ったときだった。
「あれ………?」
丹那が、窓の外を見て言う。
飛び散った血で汚れた窓の向こうには、先ほどまでなかった柱があった。
「あれに行けば………」
独り言のように、丹那は言う。
「会える………の?」
そして視線を母親に戻して、また丹那は言った。
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