吐き気を必死に抑える。
燐の手のひらからは、抑えきれない涙が溢れていた。
「先に………子供を、殺しておくべきだった」
そう、男は呟いた。
それはどういう意味か。
先に丹那を殺しておけば、両親の死を見せなくて済んだ、という男の慈悲か。
どっちにしたって、丹那は傷ついたのだ。
茉樹は殴りたくなるのをこらえる。
「好きだったよ」
男は、母親の方を見てそう答えた。
「何言って………コイツ………」
4人とも、しっかりと聞いた。
男の言葉を。
また、ドタバタと足音が聞こえた。
「動くなっ!」
リビングの入口には、警官が立っていた。
[ 53/122 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]