ふさいでも、聞こえるかもしれない。
それでもふさがずにはいられなかった。
自分が、殺される音。
もう丹那の声は聞こえなくなっていた。
目の前には原型をとどめていない丹那。
そして、上を見上げている男が立っていた。
「な………何で………」
何でここまで、酷いことをするのか。
涙が出てくる。
「………違うな」
男はそう一言、呟いた。
斗織はゆっくりと、丹那の耳から手を離す。燐は目から手を離すべきなのか、迷っていた。
嗅覚で分かるかもしれない。部屋に充満している、血の臭い。
もう、自分は殺されたのだと。
丹那が理解するのに、そう時間はかからなかった。
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