「お父さぁああん」
ガシャンという、大きな音がした。
上からガラスのようなものが降ってくる。
その瞬間、部屋が真っ暗になった。
「うわあああああああああん」
振り向いたら、そこには男がいる。
振り向けなかった。
「ま、茉樹………」
茉樹も動けなかった。
この場から、早く立ち去った方がいいのに。
足がまったく、動かなかった。
「茉樹っしっかりしろよ!!」
燐に怒鳴られ、初めて茉樹は自分が動けなかったのだと分かった。
ゴスッという、鈍い音。
時折聞こえる、何かが潰れるような音。
「に………」
斗織は急いで丹那の耳をふさいだ。
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