「来ないでえええええええええええ」
男の身体に突き立てようとした包丁は空を切り、母親の首に刃物が刺さった。
「お母さ………」
恐る恐る、リビングに入って来る丹那。
そこには、血まみれで倒れている父親。母親。
「え………」
状況を理解していないのかしているのか、丹那はポカンとした顔で男を見た。
目からは、涙が溢れていた。
「い、いやぁ………」
止まることのない涙。
「うわあああああああああああ」
逃げなきゃ。
でもどこに。
親を置いて?
丹那は、その場から動けなかった。
生きている、生きている。
小さな身体で、丹那は父親の元へと走った。
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