「丹那何も言ってないよー」
「変ねぇ………空耳かしら」
届かない。
「そんな………」
どうやって、伝えれば。
どうしたら、どうすれば――――
ピーンポーン
丹那の身体が、ビクッと揺れた。
来た。
来てしまった。
「丹那ーちょっと出てちょうだい」
「はーい」
テレビを見ていた丹那が、廊下へと走って行く。
行っちゃだめだ行っちゃだめだ行っちゃだめだ。
「燐っ丹那のこと頼んだよっ!」
「あぁっ!」
「茉樹、急ごう」
止められるかもしれない。
声だけなら干渉できるんだ、あの惨劇を繰り返さなくて、済むかもしれない。
[ 47/122 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]