あんなに、痛い思いしなくてよかった。
自分が、私が、丹那が。あのときの選択で。
大切な人の人生を、壊した。
「………丹那」
茉樹の声が聞こえる。丹那は顔を上げなかった。
「丹那」
今度は強く呼ばれた。
丹那はゆっくりと顔をあげる。
そこには、自分をまっすぐ見ている茉樹がいた。
「丹那。責めてばかりいるからだ」
「………?」
「丹那が、自分を責めてばかりいるから。だから、丹那はここにいるんだよ」
丹那の頬を両手で挟み、言い聞かせるように茉樹は言う。
「そんなに後悔してるなら、自分で謝ってきな」
「な、何言って………」
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