そこには、何もなかった。



「え………」



自分たちの、向かうべき場所が。



消失していた。



「燐っ、ちょっと。しっかりして」



「………あぁ」



気が抜けたような状態だった燐が、茉樹のことを見る。



「しっかりしなきゃ、ダメだよな」



「燐………」



悲しそうな顔で、燐は言った。



「そうだ、俺がしっかりしないと」



燐は自分の頬を叩いた。



(燐………)



燐が、何を思い出したのか。



聞きたかった。聞けなかった。



あの時聞いておくべきだったのかもしれない、と後悔する。



でも今はそれどころではないのだ。



目の前の問題に、集中する。




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