そこには、何もなかった。
「え………」
自分たちの、向かうべき場所が。
消失していた。
「燐っ、ちょっと。しっかりして」
「………あぁ」
気が抜けたような状態だった燐が、茉樹のことを見る。
「しっかりしなきゃ、ダメだよな」
「燐………」
悲しそうな顔で、燐は言った。
「そうだ、俺がしっかりしないと」
燐は自分の頬を叩いた。
(燐………)
燐が、何を思い出したのか。
聞きたかった。聞けなかった。
あの時聞いておくべきだったのかもしれない、と後悔する。
でも今はそれどころではないのだ。
目の前の問題に、集中する。
[ 35/122 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]