その、まさかだった。
悲鳴をあげた女性の声も、聞こえなくなる。
少女の嗚咽だけが聞こえてきた。
「助けなきゃ………」
なぜ助けるのかなんて分からない。
気がついたら茉樹は部屋を飛び出していた。
「茉樹っ!」
どうすればいいか、何て考えもしなかった。
ただただ走って。
着いたのは、真っ赤に染まったリビングだった。
電球は割れ、明るかったそこは闇に染まっている。
テーブルの上には夕食だろうか、3人分の食事が用意されていた。
その横に倒れている女性。
ソファに横たわっている男性。
その真ん中に1人立っている、男。
何やらブツブツと口元が動いている。
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