丹那に、嫉妬している。
別に燐のことが好きなわけではない。けれど、取られるのは嫌なのだ。
(………忘れよう)
何も、知らなかったことにしよう。
そうしていれば、楽になる。
門を開けて、玄関へと歩く。
鍵は、あいていた。
重い扉を開く。
………中からは、とてもいい匂いがした。
「何、これ………」
「料理?食事中?」
クリームシチューのような匂い。
どこか懐かしい感じがするのは、母親の味、というものだからかもしれない。
だが丹那は違った。
口元を抑え、よろつく。
「丹那っどうした?」
何もしゃべれないようで、額には汗がにじんている。
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