かみさまにあうほうほう
「おうち、かえれない?おとうさんと、おかあさんに、あえない?」
そう尋ねたナマエに、ナックラーが大丈夫だと励ますようにナマエの手に頭を擦り付ける。近くにいたピカチュウはナマエの顔を覗き込む。ポロポロと流れる涙に、マゴイチもマサムネもなんともいえなくなった。恐らくは、この子供が帰れなくなったとして、彼女を引き取ろうとするブショーは多いだろう。モトナリも恐らくは最悪な場合、そうするつもりだろうとはすぐにわかる。しかし、それはこの幼子にとっては酷でしかないだろう。
マサムネは少し息を吐いた。
「……なにも、ルギアにあう方法がないわけではない。しかし、それは古来よりランセのブショー達が夢を見て叶わなかったコトよ」
マサムネはナマエを見る。ナマエは涙を拭う。「ほうほう?」と首を傾げたナマエに、マゴイチが口を開いた。
「ランセを統一するコトだ」
――ランセ地方にある17の城。その全てを手にすれば、幻のポケモンが現れる。
ランセ地方に語り継がれるその言葉。その言葉を夢見て城の取り合いが何年も続いているランセ地方が今の現状だ。力があるブショーリーダーにより、安定はして来ていたが、ノブナガの出現によってそれらはまた不安定になっていた。
ナマエがもし、ルギアにあうとすればその言葉に従うほかないのである。無謀だ、とは、誰もが思うことだ。だから現に、マゴイチは驚いてみせたし、マサムネは「諦めた方が早い」と告げたのだ。
大人でさえも困難な『ソレ』、不可能に近いそれを、どうすればこの小さな子供が成し遂げれると言うのか。
「……モトナリ公のコトよ、何か考えがあるかもしれん。ルギアについての記述は恐らく、イズミの方が詳しいことがある」
マサムネはそう言って、ナマエを見た。ナマエはマサムネを見る。マサムネはナマエに問いかけた。
「諦めるか?」
その問いに、ナマエは小さく首を左右に振った。マゴイチはそれを見てやれやれと息を吐き、マサムネは笑う。
「ふ、そうでないと始まらんわ!何か困ったことがあれば言えばいい、協力してやらんこともない」
くしゃりとマサムネはナマエの頭を撫でる。ナマエは小さくうなずいた。
「この小鳥がどのように羽ばたくのかは、見ものよ」
そう告げたマサムネに、マゴイチは「兄妹みたいだな」と少し笑った。
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