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ぶしょうぱわー



 勝負は拮抗だと言える。ただ、大人と子供の差ともいうのか、やはりナマエの指示というのは曖昧な者が多くて。すこしボロボロになっているピカチュウを見て、ナマエは眉尻を下げた。

「ピカチュウ、だいじょうぶ?」
「ピカ!」

 そう頬袋から電気をピリピリとながしたピカチュウに、ナマエはほっと息を吐いた。ナックラーがくいくいとナマエの着物を引っ張る。

「ナックラー?」

 ナックラーを見れば、ナックラーはナマエの帯の部分を見つめていた。正しくは、帯の部分に差してある笛を見ているのだけれども。ナマエはそれを見て笛を見る。いつも吹いている笛だ。
 ――ブショーには、ブショー独自の特殊な力がある、とはモトナリに聞いた言葉だ。
例えば、モトナリのブショーパワーは『かたいけっそく』という、味方の防御力をあげる物であるし、マゴイチの物は『ねらいうち』というポケモンの技を必ずあてさせる物だ。ナマエもいつか使えるようになるかもしれないね、とつげたモトナリも、チラリとナマエの笛を見ていたのだけれど。
 ナマエはそっと笛を触る。変哲のない笛だ。屋台で売られていた、おもちゃの。しかし、こういうものは気持ちの持ちようだと、モトナリの家臣は告げていたから。
 ナマエが笛に口をつける。奏でられた音色は優しく美しい。包み込むようなそれを聞いてピカチュウの傷が癒えていく。それはマゴイチのマスキッパも、ユキムラのポカブも同じだ。

「これは、」
「『いやしのうた』、ですか」
「美しい音色だが、やめさせた方が良いのではないか?」

 そう声を投げかけたのはカネツグだ。アヤゴゼンも驚いたように目を見開き、ケンシンはゆるりと目を閉じた。それもそうだろう。回復しているのが『味方』のポケモンだけではないからである。

「ふふふ、なんて慈悲深く優しい子なのでしょう」

 音がやむ。曲が終わったらしい。ナマエがピカチュウを見下ろすと、ピカチュウはうれしそうに一鳴きした。ナックラーもニコニコと笑うようにナマエを見上げる。それは他のポケモン達も同じだ。ポカブは驚いたようにナマエを見ているし、マスキッパはふわふわと漂いながらナマエの法を見てニコニコしている。エルレイドはやれやれという感じでナマエを見てからケンシンを見上げ、クマシュンはアヤを見上げて、ユンゲラーは困ったようにシンゲンを見た。ケンシンはナマエのさらに奥を見て、口を開く。

「――シンゲン」

 その言葉は静かに、でも確かに響いた。それと同時に、笑い声と足音が聞こえる。

「なんじゃ、バレとったのね」
「お館様!?」

 現れたのはシンゲンだ。ユキムラもポカブも驚いたようにシンゲンを見る。ドロン、という声とともに現れたのはくノ一である。

「どういう――」
「なに、ナマエがポケモンとリンクしてるってことは、ブショーパワーもあるんじゃないかと思ってね」

 そう笑ったシンゲンはケンシンを見た。

「ケンシンに協力してもらって、使えるのかどうかを確かめさせてもらったのよ」
「イクサってのは」
「小さきものを巻き込むものではない。しかし、これより北へ進むのであればブショーパワーを使えた方が良い」
「その通り。北へ進めばそれだけ彼奴の勢力下に近づくことになるからのう。ツバサも例外ではあるまいよ。これからどうなることが予測されるか、おこともわかっとるじゃろう?」

 シンゲンの言葉に、マゴイチは息を吐いた。
「――北はそんなにあれてんのか」
「フクツが落とされるのも時間の問題」

 ケンシンの言葉に、マゴイチがぐっと拳を握ったのが見える。ナマエの視線に気づいたのか、へラリと笑いはしたが。

「こりゃあ、はやくツバサに行くしかねぇなぁ」
「ま、急がば回れ、じゃよ」

 そうあっけらかんと笑ったシンゲンに、ケンシンは目を伏せて口を開く。

「小さき者よ、なんじのこれからの旅路に加護を」


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