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あいのり



「ナマエ殿、疲れてませんか?」

 ユキムラに問いかけられ、ナマエは縮こまりながら「大丈夫です」と答える。それを見たマゴイチは愉快そうに笑う。何をしてるか、といえば、ナマエはユキムラと共にギャロップに乗っている。ナマエはどちらかといえばマゴイチと一緒に乗りたかったが、面白がったマゴイチがユキムラの前に乗せたのだ。むしろナマエとしては、ダイチの国にいた、おとなしいポニータの方に乗りたかったのが本音ではある。が、ポニータとギャロップでは走る速度が違うので無理は言えない。
 ギャロップといえば、タテガミの炎である。ナマエの地方のギャロップは、気を許したものしかタテガミの炎は触ることができないが、ランセ地方はすこし違うようである。というのも、ギャロップがみな大人しく人懐っこいのだ。初対面の相手でも、気軽に背中に乗せてくれる。でなければ、きっと、この地方で移動手段として成立しなかったに違いない。
 ピカチュウはマゴイチの肩にのり、ナックラーはナマエの腕の中にいる。ユキムラの肩にはポカブが乗っていた。ナックラーは熱くない炎のタテガミが不思議なのか仕切りに首を傾げている。

「もうしばらくしたらゲンムに到着しますよ」
「やっぱギャロップで移動するとはえーな」

 その会話にナマエが顔を上げて見れば、空中に浮かぶ不思議なお城があった。


 この国でやること、といえば、マゴイチにもナマエにもないに等しいのだが、ユキムラ(言わずもがなここでお別れするつもりである)には用事があるわけで。大きな門に立っていた青年に、孫市は落胆したように顔をしかめた。ユキムラはその青年に声をかける。
「カネツグ殿!」
「ム! ユキムラじゃないか!……それにマゴイチも?」
「あぁ、くそ、巻き込まれないうちに別れようと思ったのに。国に入って早々これかよ」
 マゴイチから零された言葉に、反応したのはマゴイチの肩にいたピカチュウだけだ。ナマエを連れて離脱しようにも、ユキムラが乗るギャロップにナマエがいるのだから離脱できない。
 ユキムラはギャロップから降りて、ギャロップを引く。

「久しぶりだな! ユキムラ!」
「ええ、カネツグ殿。この前のイクサぶりですね」
「ああ! また腕を磨いたようだな!」
「カネツグ殿も」

 そうニコリと笑んだユキムラに、カネツグはギャロップの上にいたナマエを見て首をかしげた。

「ユキムラ、この娘は……まさか、信玄公の隠し子か!?」
「ちげーよ」

 マゴイチが近づいてきて否定の言葉を入れる。ピカチュウをナマエに渡せば、ピカチュウはナマエの後ろに登る。

「そいつはナマエ。とある用事でアオバのくにからツバサのくにまで旅してんだ」
「アオバの国から……?マゴイチはそのお守りというわけか」
「護衛といってもらいたいね」

 そういったマゴイチにカネツグはナマエを見た。

「ポケモンを連れているということは、アオバのブショー候補か!それにしても、見たことがないポケモンだ……もしや、噂に聞く海の外の子供か?」
「噂?」

 マゴイチが眉を潜める。

「あぁ、出処はわからないが……オレンジ色の見知らぬポケモンを持った海の外の子供が旅をしているという噂だ」
「ダイチの国でも流れていました。と、言ってもごく一部のブショーの間ですが」
「厄介な事になったな」

 眉間に皺を寄せたマゴイチにナマエは首をかしげた。どこか不安げである。それに気づいたマゴイチはナマエの頭を撫で、心配すんな、と告げた。


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