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しのびはわらった




 これはこれは、面白いことになってるな。
 どろん、と現れた先で、女性――くのいちはそう思った。泣いている女の子に、自分の上司である青年ーーユキムラは困ったように眉尻を下げている。

「って、ナマエちんじゃないですかー!」
「くのいち、知り合いか?」
「初対面です、ユキムラさまぁ!」

 にぱり、とくのいちが笑えばユキムラは首を傾げる。ナマエはまたパチリと瞬きをした。二人とも、何故、知ってるのだろうか、という表情だ。教えるべきだろうが、ここはあまり良い場所とは言えない。それにユキムラの上司である人物もその話に興味を持っていた。ということは、城に帰って話した方がはやい。

「んー、ユキムラさま、詳しい話はお城で話しますよ」
「城で?」
「じゃあ、ナマエちんとあたしはお先にー!」
 どろん!

 くのいちがナマエを抱えたと思えば消える。ユキムラは何時ものことなので、ため息を吐いたが、ナマエのそばにいたピカチュウは違った。一瞬の間をおいて、「ピカピ!!」とナマエを探す。クンクンと鼻をきかせるが、耳がしょげてしまっている。
ユキムラはピカチュウを見て、もう一度屈んだ。可哀想に、くのいちも一緒に連れて行ってあげればよかったものを。

「私は城に戻る。多分、君の主人は城にいるだろう。一緒にくるか?」

 そう告げれば、ピカチュウは迷ったものの、ユキムラが安全だと判断したらしい。ユキムラの肩に飛び乗った。
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