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おとこがこまった


 さてさて、困った。
 それが、助けた幼い女の子を泣いてしまっている目の前にした青年の気持ちだった。泣き止ませようにもどうすれば良いのかイマイチわからず、女の子の頭を撫でている。そばにいるピカチュウは女の子を心配そうに見上げ、また、腕の中にいる青年には知らないポケモンは励ますように頬ずりをしている。こういう時、青年の部下であるくノ一がいれば、なんとかなるんだろうか、と青年は考えを巡らす。
 ポケモンを連れているということは、ブショーと呼ばれるそれだろうか。しかし、年齢を考えると初陣もしていないだろうから宣戦布告や密偵ではないだろうし、この国ではブショー候補が青年の勤める城に来るため、面識がないとなれば青年の住む国の住民ではないだろう。と、なると何処からか旅をしてきたことになる。一人で旅は無理だろうから、連れがいるはずだ。はぐれてしまったのか。
 青年はそこまで考えて、口を開く。

「私の名はユキムラといいます。あなたは?」
「……ナマエ」
「ナマエ殿は、みたところ、旅人のようですが、連れはどうされたのです?」

 青年――ユキムラの言葉に、泣き止みつつある女の子――ナマエは首を傾げる。そして、数秒おいて、口を開いた。

「マゴイチさんのこと、?」

ナマエから出た人物名に、ユキムラは瞬きをする。そして、ナマエの服を注意深く見た。しかし、マゴイチの――というより、雑賀衆の家紋である三本足のヤミカラスのマークはない。

「貴方は雑賀衆の……?」

 ユキムラの言葉にナマエは首を振る。その様子に、ユキムラも首を傾げた。しかし、他に思いつくマゴイチもいない。同姓同名なのだろうか。もう一度、注意深く服を見れば、アオバの国の――というよりはアオバの国のブショーリーダーであるモトナリのマークが入っている。

「アオバの国から来たんですね」

 ユキムラの言葉にナマエは頷く。アオバの国から来たのは確からしい。しかし、そうなると余計にマゴイチとの接点がわからないということで。

「あっれー!ユキムラさまが女の子を泣かしてる!悪いんだー!」
「くのいち……」

 背後から現れた女性に、ユキムラはホッと息を吐く。彼女なら何か知ってるだろう。
 一方、ナマエとピカチュウはいきなり現れた女性に驚き固まっていた。ナックラーは首を傾げただけだったが。
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