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あのこがまいった



 さてさて、参った。
 ナマエは甘味屋さんで、ポツンと一人で座っていた。マゴイチは、綺麗なお姉さんを見かけて、席を外している。この旅で時々稀にあることなので、ナマエは気にはしていない。マゴイチさんは知り合いがおおいなぁ、ぐらいにしか。こういう時、マゴイチはナマエに妥当なお金をあげ、「今から自由行動な、何時にこの茶屋に集合で」と言ってナマエが頷いたのを確認してから去って行く。今日もそのパターンで、何時ものように茶屋でずっと待っていようかとも思ったが、お店は忙しそうであり、自分が邪魔なのがわかる。ナマエは食べてしまったお団子と、ポニギリを頬張るピカチュウとナックラーを見る。二匹は何事かと首を傾げた。


 結局、茶屋に居づらくなってしまった為、ナマエは城下町を歩いていた。アオバの国は、モトナリと。シデンの国はギンチヨと。コブシの国はマゴイチと、それぞれ散策していたが、一人でははじめてだ。何をすればいいのかもわからないまま、ナマエは大きな道を歩いていく。
 しかし、道の端に楽器屋さんを見つけ、ナマエがそちらへ向かおうとした時、それはおこった。

「あ?お前はブショーか?何処の国のもんだ?」

 背後からかけられた言葉に、ナマエは後ろを振り向いた。そこにはいかにも柄が悪そうな男が立っている。しかも、一人ではない。複数だ。
 ナマエが数歩後ずされば、男達はにやりと嫌な笑みを浮かべる。嫌な、予感がする。 ナマエがナックラーをぎゅうと抱きしめる。ピカチュウも何かを察してかまえた。

「いや、まだブショーじゃねぇみたいだな」
「売ったら金になるんじゃねーか?腕の中のやつ、みたことがないぞ」
「お嬢ちゃーん、ちょっとお兄さん達とお菓子食べない?」

 男達が一歩近づくにつれ、ナマエは一歩さがる。それを数回繰り返せば、ナマエ達は壁際に追い詰められた。
 ――怖い。
 ナマエは目に涙を一杯に溜めて、しかし、泣くのを堪えている。男達の要求には首を横に振って拒否をしめすだけだ。助けを呼ぼうにもマゴイチはそばにいない。ナックラーも男達に噛まんと睨み、ピカチュウは頬からピリピリと電流を流している。

「マゴイチさ、」

 ナマエが小さくマゴイチの名を呼んだ時だった。凛、とした男性の声が聞こえてきたのは。

「何をしているんです?」

 凛、とした声。しかしながら、怒りの含まれたそれに、男達の顔が青ざめていく。

「こ、これは、なぜ、こんな場所に」
「私が御館様の城下町にいてはおかしいのか?」
「い、いえ、そういうわけでは、」
「お、俺たちは、これで失礼します」

 尻尾を巻くように逃げて行く男達に、ナマエはふっと息を吐いた。そして、また、あの凛とした声の持ち主が今度は優しさを含ませてナマエに声をかけた。

「大丈夫でしたか?」

 ナマエの目線までかがみ、ナマエを伺う。ナマエは安心して、ポロリと涙をこぼした。
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