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らうんど、つー



 十ターンを過ぎると、マゴイチとナマエは三つの旗を守っていた。自信満々で旗を守るナックラーと、旗の前にいる少し傷ついたピカチュウ。ナマエが二人の旗の間にある旗にいる。動いているのはまだまだ余裕そうなマゴイチとマスキッパだ。それに対し、ヨシヒロのチームは、ヨシヒロとドテッコツのみだ。

「ふむ、なかなかだな。だが、これこそが博打よな」

 ヨシヒロがふっと笑う。少々疲れているようなドテッコツも同じく笑った。

「ドテッコツ、朱色の奴に向かうぞ!」
「なっ!」
「!?」

 ドテッコツが、目の前にいたマスキッパとマゴイチを無視し、ナックラーの元へ向かう。ナマエは慌ててナックラーに駆け寄ろうとするが、ドテッコツの方が早く着いてしまったらしい。

「ドテッコツよ、めざましビンタだ!」
「ナックラー!!」

 ナマエがナックラーに向かって叫ぶようにいうのと、ドテッコツがめざましビンタを繰り出すのは同時だった。その瞬間、ぐらり、とイクサ場が揺れる。ぐらりぐらりと大きくなっていくその揺れに、驚いたドテッコツは攻撃をやめ、ナマエはバランスを崩し転けた。ヨシヒロとマゴイチも膝をついている。唯一揺れに影響されないマスキッパがフワフワとナマエの元へやって来た。だんだんとひどくなった揺れに対し、ドテッコツの足元がパキパキと音をたてはじめる。そして、地面から岩の塊のようなものが突出した。
 よけることができなかったドテッコツは、弾き飛ばされヨシヒロの近くにふらふらと倒れる。それと同時に地面の揺れは収まった。


 しばしの沈黙の後、一番に動いたのはナマエだった。ナマエは「ナックラー!」と半ば叫んでナックラーに駆け寄る。ピカチュウもそれに続いて駆け寄った。ナックラーはナマエに嬉しそうに擦り寄った後、自信満々の態度で鳴いた。

「ナックラー?」
「ピカ?ピカピカチュ?」

 ナマエが首を傾げ、ピカチュウがナックラーに喋りかける。ナックラーはそれに対して一言二言返した後、ピカチュウと共にナマエを見た。

「ナックラーがしたの?」

 ナマエの問いかけにナックラーが答えるように鳴く。ナマエはそれを聞いてナックラーを抱きしめた。

「ナックラー、すごい!」
「ピカ、ピカー!」
「ピカチュウも、すごいよ!」
「チャア!」

 ナマエは笑顔で二匹を抱きしめる。それを見てようやく大の大人たちが動き出した。
マゴイチはぐるりとあたりを見渡す。こちらのポケモンは残っているが、ヨシヒロ側のポケモンは残っていない。しかし、まぁ、それはナックラーがターンを守らなかったという不意打ちもあるわけで。
負けか。マゴイチはため息をついたが、ナマエの珍しい笑顔を見て笑うとヨシヒロに近づく。ヨシヒロもドテッコツをかかえると、ふっと笑った。

「勝負運の強い女子よな」
「勝利の女神の卵ってトコか。さて、こっちは、まぁ、ナマエが反則したっつったらしたことになるわけだが……」
「それに関しては構わん。それもイクサのうちよ」
「いいや、それは俺の気が引くね。今回は引き分けでどうだ?」
「ふ、それもよかろう」

 ヨシヒロはナマエからマゴイチへと顔を向けた。

「今日は城に泊まるがいい」
「……案外あっさり引くんだな」
「まぁ、もとよりギンチヨから文が届いているからな。もてなさんわけにはいかん」
「は?」
「では、こちらは城で待つとしよう」

 ヨシヒロの言葉にマゴイチは固まる。ヨシヒロは部下に「引き上げるぞ!」と声をかけた。

「一杯食わされた……」

 マゴイチは去って行くヨシヒロを見て苦々しく呟く。ナマエとナックラー、ピカチュウが何事かと首を傾げた。
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