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らうんど、ぜろ



 目の前にある巨大なリングのようなそれに、ナマエは「わぁ」と驚きの声をあげる。リングはテレビで稀にしている「エビワラー対エビワラーのボクシング」で見たことがあるが、ここまで広いそれは見たことがない。ちなみにボクシングはナマエの母が好きな番組だ。ナマエは「お母さんが見たら喜びそうだ」と顔を綻ばせる。それを見たマゴイチはぎょっとした。

「格闘タイプが好きなのか?」

 ナマエは小さく首を縦に振り、小さく呟いた。

「お母さんが好き」
「……珍しいな、女性で格闘タイプを好きなのか……」

 マゴイチの言葉にナマエとナックラーが首を傾げた。女性で格闘タイプ好きな人は結構いると思う。しかしながら、これは、ナマエの母親繋がりで得た知識であり正しいとも限らないが。

「ナマエ、ここはイクサ場っつってな、……まぁ、説明は後だ。面倒なことになる前に、ここからーー」
「貴様ら、何者だ!」
「げ、」
「曲者だ!であえ!!」

 沢山の人がやってきて、マゴイチが顔をしかめる。ナマエは咄嗟にマゴイチの後ろに隠れた。マゴイチはナマエを安心させるように頭を撫でる。ナマエの背中に乗っていたピカチュウが戦闘大勢に入った。

「その家紋、雑賀衆か!」
「雑賀衆が何の用だ!何処かに雇われているのか!?」
「雇われてるっちゃ、雇われてるが、イクサを仕掛けにきたわけじゃねーよ」

 マゴイチがため息をつく。ナマエはちらりとマゴイチの表情を伺った。眉尻を下げて困ったような表情だ。でも警戒はしてるらしい。そしてナマエは前にいる集団をみる。筋肉質の男性が多い気がするのは気のせいではないだろう。その男達が睨んでいるのだから、ナマエはマゴイチの服を握って背後に隠れる。睨まれるのには慣れていない。

「何の騒ぎだ」

 一際低い声が響く。誰か来たらしい。

「ほぅ、雑賀衆か」
「話がわかりそうな奴が来たな」

 マゴイチがホッと息を吐く。ナマエはそれを見て、またちらりと顔を出した。先にいるのは白いヒゲを生やしたおじさんだ。周りがヨシヒロ様と読んでいるあたり、ヨシヒロというらしい。


「俺たちはイクサに来たわけじゃないんだが、」
「イクサに来たわけじゃないなら、何故イクサ場にいる?」
「ナマエがリングに興味持っちまったからな……早く通り過ぎるつもりだったんだが」

 マゴイチは頭をかく。ナマエが小さく、ごめんなさい、と謝ると、別にいいさと頭を撫でた。

「見たことのない子供よ。ポケモンを連れているという事は、ブショーか?」
「いいや、ブショーではない。ちなみに、ナマエは雑賀でも俺の女とかそういうものじゃないからな。モトナリから護衛を頼まれただけだ」
「大殿に?」
「そ、色々わけがあってツバサの国に向かってる、な?」

 マゴイチに同意を求められ、ナマエはこくんと頷いた。ナックラーも同時に頷く。それを見て、ヨシヒロはふっと笑った。

「成る程、理由はわかった。だが、ここに来た以上は戦ってみるのも乙よ」
「拒否する。ナマエはイクサ未経験者だ」
「なら、模擬戦でもいいだろう。そちらが勝てば、宿代はタダにしよう」
「俺たちが負ければ?」
「コブシの国から先には進ません。なに、博打よ」

 マゴイチは眉間に皺を寄せた。コブシの国から先に進めなくなれば、 シデンの国に戻ってサナギの国へ行かなければならない。今からだと、時間がかなりかかってしまう。ナマエの負担が大きくなるだろう。

「……ナマエ、大丈夫そうか?」

 マゴイチはナマエに尋ねる。ナマエは何と無く頷いた。なんとかなる、と思う。イクサが何かわかってないけど。そういう雰囲気だ。マゴイチはそれを確認すると、ヨシヒロに向き直った。

「わかった、受けて立つぜ」

 マゴイチの言葉に、マゴイチの背後にいたマスキッパとナマエの前にいるピカチュウが鳴く。そして、一歩遅れてナックラーが鳴いた。
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