ツェッドの目の前にあるのはあの絵画だ。美しい景色はあの庭のままだ。見れば見るほど、中の女性はリアににている。母親、だとか、祖母だという可能性も十分にある。だが。
作品の説明には、作者の兄弟の言葉が書いてある。
――弟は彼女に恋をしていたのだろう。彼女とであってから弟は明るくなった。そして、彼女を守るために戦場へ向かった。私は彼女にこの絵を渡そうとしたが、どうしてもたどり着けなかった。
「レオナルドくん、ついてきてほしい場所があるんです」
何かを決心したようにツェッドはレオナルドに見る。レオナルドは首を傾げた。
「レオナルドくん、いくつかお話したいことがあります。と、いうか意見を聞きたいんです」
「なんです?改まって」
公園へ向かう途中、ツェッドはそう口を開く。
「おそらく、なんですが、彼女は僕の知り合いです」
「彼女? ああ、ゴーストですか? って、え?」
「僕の友人が、あの絵にいる彼女にそっくりでした。描かれた庭もね」
「偶然じゃなく?」
「このHLに同じ場所があるとは思えません」
ツェッドの言葉に、レオナルドは確かに、と思う。このビルの中、あんな建物があれば目を引くはずなのだ。
「彼女が吸血鬼か否か見極めてほしくて」
「え、でも、吸血鬼なら、」
「その時は僕が」
レオナルドはツェッドを見上げる。ツェッドはただ真っ直ぐにそちらを見た。レオナルドはツェッドにつられて路地裏を見る。何か不思議な感覚がする路地裏だ。どうしたんです?と聞けば、いいえ、とツェッドは首を振った。
そして、公園へまた足を進める。しかし、当の本人はいない。子供伝いにメッセージがのこされていた。
――急用が入り、会えなくなった、と。
ホリーグリーン・ミー
43/63
← top →