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「最近、ロシウはリアにべったりね」

 リーロンの言葉に、読んでいた本から顔を上げる。そうだろうか、と考えて、確かに最近リアさんリアさんと懐かれている気がする。

「子供扱いしてるだけなんだが」
「それがいいんじゃないかしら?甘える場所は大事よ。シモンにはヨーコがいるけど、ロシウは甘える場所がなかったものね」
「しかし、そんなにわかります?」
「ええ、貴方もよく気にかけてるじゃない」

 そう言って甲板に目を落としたリーロンの視線をたどる。下にいたシモンとロシウ、ニアにダリーにミギーが手を振ったので、私も手を振っておく。もうすぐ敵地に行くというのに、少しばかり穏やかな日々だ。

「――何処まで一緒にいられるんだか」

 ポツリ、と呟いた言葉に、リーロンが私を見た。

「永遠に一緒にいられるわけじゃない」
「あら、敵を倒せば安泰なんじゃないの?」
「いつか私は消える。あの子の前から、貴方たちの前から。いや、この世界から」

 そう自嘲する。いつか必ず私はこの世界からいなくなるのだ。どのタイミングかはわからないが。それまではあの子達の家族に変わってやれるが、いきなりいなくなった時、彼らは対応できるんだろうか。

「永遠に続くと思っていたものこそ、短命だ」
「あら経験談みたいじゃない」
「私にも親代わりだった師がいたんだ。だが、彼は私が17の時命を落とした。私には弟弟子がいたから、誰かに甘えることもなくなってしまって。昔はずっと続くと思ってたのに」

 リーロンが何も言わずに私を見下ろした。風だけが吹き抜けていくそこ。静かな空間だ。賑やかな声が遠くに聞こえる。
 不意に後ろの扉が開いた。リアさん、と顔をのぞかせたのはロシウだ。

「リアさん、昨日の続き、教えてもらっても?」
「あぁ、わかった」
「ロシウ、リアを離しちゃダメよ」

 不意にリーロンがロシウに声をかけた。ロシウは「は?」とリーロンを見る。

「じゃないと、何処かにいっちゃうわ」
「リアさんが?」

 私を見上げたロシウに微笑んでおく、そして、リーロンは私を見た。

「リア、貴方の理論だと、永遠がないのなら、別れも永遠じゃなくなるわよ」
「おっと、揚げ足を取られたな」

 苦笑いをして、ロシウの頭を撫でる。行こうか、と声をかければ彼は頷いた。


永遠などあらず


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