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 よくわからないが、私は世間知らずなお嬢様という立ち位置についたらしい。ニアと同じようなポジションに落ち着いたわけだ。何もしないのは心が痛むが勝手にいじるよりはマシだろう。まだ一部からは鋭い視線を貰ったままである。まぁ、妥当な判断だ。と、いうことで持っていた本をめくる。ソーに貰った本なので、貴重なそれであるが私が持ったままでよかったんだろうか。ソー曰く、自分の道のりを示す本。ロキ曰く、過去に囚われる本。双方正しいといえるかもしれない。

「あら、リアさん、何をしているんです?」

 聞こえてきた声に顔を少しあげる。ニアと、ギミーとダリーだ。割り込んできた幼い二人を受け入れつつ、ニアの質問に答える。

「本を読んでいるんだ」
「本?」
「ほら、」

 そう言って見せれば、ギミーとダリーが私を見た。

「リア、文字が読めるの!?」
「リア、すっげー!」
「――本、とは何ですか?」

 三者三様の言葉だ。どう反応したらよいのやら。今迄も時々あったが、文字を習うことができない世界であるらしい。

「ああ、読めるよ、ダリー。ニア、本は物語が書かれてる書物だ」
「まぁ、それは素敵だわ。リアさん、物語を聞かせてくださいな」

 ニアの言葉に、ギミーとダリーも聴きたーい!といい苦笑いをする。仕方ない、と本を閉じる。そして別の本――絵本とよばれるそれだ――を開き、口を開いた。

「昔、昔、ある所に――」




「のでした、おしまい」

 そう言って何時の間にか増えていた人に苦笑いをする。

「貴方、文字を読めるのね」
「ええ。ギミーとダリーは読めないんですね」
「あら、二人だけじゃないわ。多くの人が文字を読めないの。貴方の教養は貴重よ。貴方が持っている本もね」

 リーロンの言葉に、絵本をみる。簡単な童話だ。昔話に似たそれである。仕事に戻っていく人を見ながら、リーロンを再びみた。彼(もしくは彼女)に私の絵本を渡せば、ギミーとダリーがブーイングを上げたので、後であげるよ、とだけ告げる。

「貴方は本当に何処からきたのかしら?って、それを思い出せたら苦労はないわね」
「――流星の賢者は西より来たりて、人を導くであろう。我らは人に賢者を近づけてはならない。我らは賢者を殺さねばならぬ。我らの繁栄のために」
「ニア?」
「昔、聞いたお話です。西から流星の賢者さんという方が来て、人を助けてくれるそうです。だから、獣人は賢者さんを倒さなきゃいけないらしいです」

 ニアの言葉に、リーロンが私を見る。私はしかめっ面だろう。殺される気はないが、嫌な話があるものだ。というか、流星の賢者など名乗ったことがないのに、どうして色んな世界に広がっているんだろうか。曰く、リーロンも聞いたことがあるらしい。

「貴方、賢者なの?」
「いえ、賢者では」
「防衛上にも関わるから正直に教えて。貴方は賢者?」

 私は両手を挙げて息を吐く。

「……確かに流星の賢者と呼ばれることはあるが、そう名乗った覚えはない。人違い――」
「リア、アンタは暫く外にでちゃダメよ。自覚が有ろうが無かろうが、獣人にバレたら面倒だわ」

 いいわね?と釘を刺されてしまえば、どうすることもできないのである。息を吐いて、返事をした。


賢者ではなく


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