結局、僕+アベンジャーズでマスターを倒した。ボロボロのマスターだが、僕もボロボロである。ゆっくりと僕に視線を寄越したマスターは、小さく口を動かした。しかし、僕らに聞かれることはなくそれは空気になって消える。リア、リアと小さな子供がマスターを揺するけれど、マスターは動かない。
「これはやばいな……ルート、D-スマッシュしろ。ディスクにはヒーリング機能がある」
「リア、しなない?」
「あぁ、だから、はやく」
小さな子供は泣きながらD-スマッシュと何かを持って呟く。その言葉に、マスターは光の粒になって取り込まれた。
「なにこれスゲェ」
小さく呟けば、子供の視線がこちらを向いた。
どうやらマスターは何処かの科学者のせいで記憶制御のチップを埋め込まれていたらしい。ディスク越しにどうしたのかはしらないけれど、マスターのそのチップはちゃんと除去されたらしい。アバターと称される形で姿を現したマスターは僕のよく知る姿だった。茶色のローブを着た彼女。ジェダイだったころの姿だ。
「これは――一体――」
「リア、率直に聞くが記憶はどこまであるんだ?」
アイアンマンの言葉に、マスターはゆるりと首を振る。
「私の名を知っているということは、私と何か関わりがあったみたいだがーー生憎、記憶がない」
「リア、僕のことも覚えてないの?」
そういった子供を見上げたマスターは、困惑したような表情を浮かべた。泣きそうな表情になっている子供への配慮だろうか。
「君は――、」
言葉の続きを待つ子供に、マスターはどうしようかあぐねているようだった。しかし、何かを見つけてハッとしたように口を開く。
「ルート。君の名前は、ルート」
「!!リア!!」
「すまないが、名前以外は覚えていないんだ。時期に思い出すかもしれない。それでもよろしくしてくれるかな?」
「うん!するよ!!」
笑顔になった子供――ルートくんというらしい――に、マスターはホッとしたように笑った。一件落着のようだ。
「じゃあ、僕はここで失礼するよ」
「ちょっと待って、貴方はヒーローなの?」
女の子の問いにゆるりと首を振る。
「僕は唯の大学生さ。外交官見習いの、ね。僕が正義を掲げるのは早すぎるよ」
肩をすくめてそういうと、アベンジャーズはこちらをまっすぐに見て、子供は首をかしげた。じゃあね、と背を向ければ、マスターから声をかけられた。
「ありがとう。君がいなければ私はダークサイドだ」
「……そんなこと、」
「May the Force be with you,シラー」
マスターの告げた言葉に、泣きそうになる。でも、マスターはもう僕のマスターではなく、あの子のマスターなんだろう。じっと耐えて、振り返らずに尋ねる。
「僕はもう一人前のジェダイ?マスター」
「あぁ、もう一人前のジェダイだ。パワダンじゃない」
「そっか!なら、ヒーローになるのもアリだよね!May the Force be with you、リア」
少しだけ振り向いて手を振れば、マスターも笑って手を振った。
May the Force be with you
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