記憶が、おかしい。誰かを師と仰いだ気がする。誰かを探して、どこかで生きていた気がする。あやふやなそれ。忘れたくないと記憶は叫ぶけれど、それらは段々と抜け落ちていく。
私 を 助けて くれた 人 は 誰 ?
「貴女の名はリア。貴女の弟である、ルートを護る存在。貴女の優先順位は、まず弟であるルートよ。そして、ルートの、ルートだけのヒーローでもある」
目の前にいる女性が告げた言葉を反復する。弟、ルート。ルートを護る、ルートだけのヒーロー。私の名前は、リア。ルートを護る存在。ルートのただ一人の姉。私は、この教授のルートへの誕生日プレゼント。
女性に手を引かれてやってきた男の子。彼がルート。私の、弟、?そう、弟だ。
「はじめまして、ルート。私はリア。貴女の姉だよ」
「わぁ、ほんとに!?」
「そう、ほんとうだよ、これからよろしくね。ルート、私の大切な弟ーー」
目の前にいる弟は、大変ご立腹のようである。困ったな、とほおをかくけれど、誰も助けてくれなさそうだ。アキラの肩に乗るアイアンマンーートニーなんかは呆れている。
「ルート、私の言うことを聞いてください」
「やだ!」
「危ないんです。貴方にはディスクがない。行っても危ないだけです」
「やだ!!リアがいるもん!」
「私はヒーローではありません。貴方を護るのは確かに私の役目です。ですが、」
「やぁだぁ!!」
わぁわぁとワガママを言うルートにどうしたものかと眉尻を下げた。ルートと私は、アキラやヒカル達同様選ばれた人だ。でも、彼らと違いディスクを持っていない。私は戦う力があるが、この中で一番幼いルートにはない。今回の任務は危ないから、嫌な予感がするから、ここから離れないほうがいいから。そう告げても納得しない弟にため息をついた。
「ルート、今回は私たちは足手まといにしかなりません。わかってください」
「知らない!リアなんて知らない!!」
「ルート、」
「僕のワガママを聞いてくれないリアなんて、知らない!大っ嫌い!」
忘却の先に得たもの
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