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「おい、大丈夫か」

 ぐらりと揺らされた体に、重い瞼を開ける。ぼんやりと視界に映ったのは、先程までの緑に囲まれた場所ではない。何処か水源に近い場所だった。

「、へ」

 間抜けな声を出し、体を起き上がらせる。目の前にいた男性は私の目線にあわせてかがんでくれていた。

「何度か呼びかけても、返事がなかったから心配したんだが……その様子では、大丈夫そうだな」

 そう言って笑った男性は金色の長い髪を風になびかせている。同色の髭は、何処か昔のマスターを思い出す。

「それで、君の名はなんと言うんだ?」
「……名乗るのは自分からだとよく聞きますが」
「あぁ。これは失礼。私の名は、クワイ=ガン・ジン。君の名は?」
「私の名は、リアといいます」
「リア、リア……聞いたことがない名だな。しかし、ライトセーバーを持っているということは、私と同じジェダイのようだな。自分のマスターの名は?」
「――……オビ=ワン・ケノービです」
「オビ=ワン・ケノービ?」

 眉を顰めたクワイ=ガン・ジンさんに、こちらも眉を顰める。彼は私と同じジェダイと言ったが、私は彼に面識がない。お互いに多少警戒をしたまま、私は周りを見渡す。見たことのない場所である。どうやって移動したのかも定かではない。それを見て頭に巡ったのは、あの砂漠で拾われた日のことで。
また移動したのかと、眉間にシワを寄せてため息をついてしまった。ジェダイ、というものがいる以上、同じような世界には違いない。

「貴方は、オビ=ワン・ケノービに心当たりが」
「あぁ、ある。が、彼はまだジェダイ・ナイトではない。彼はまだパワダンだ」
「……パワダン?」
「……まさか、ジェダイでありながら、ジェダイの知識がないのか? ジェダイの掟を言えるか?」

 ジェダイの掟。新しい掟はまだ試行錯誤中だ。その為、ちゃんとしたそれはない。なので、顔を左右に振って否定すれば目の前の彼がため息を吐いた。

「わからないのか」
「わかっていたたとしても、貴方の知るそれとは違う気がします」
「……どういうことだ?」
「ややこしくなってしまうので、言いません。しかし、言えることが一つ」
「?」
「私は私の家にいた筈なのですが、貴方に起こされ目が覚めたらここにいました。ここは、どこなのでしょうか?」

 私の言葉に、彼はパチリと瞬きをする。そして、「記憶喪失とした方が良さそうだな」と苦笑いした。


「マスター!」

 ふいに彼は背後からかけられた声に、くるりと後ろを振り向く。私は彼の隙間からそちらに顔を向ければ一人の青年がいた。手には何かをもっている。青年はこちらに走り込むと、クワイ=ガン・ジンさん――面倒なのでジンさんと呼ぼう――と同じく私にあわせてかがんだ。

「あぁ、目が覚めたんですね」
「えぇ、お気遣いありがとうございます」

 彼から感じるものにきょとんとしながら、そう答えれば彼は私からジンさんに目線をうつした。

「で、マスター。彼女が誰かわかったんですか?」
「いや、わかったのは名だけだ。どうやら記憶喪失に陥っているらしい。ちなみに、我がパワダンよ」
「どうしたんですか?急に」
「……いや、この女性に見覚えは?」

 ジンさんの言葉に青年はこちらを数秒眺めたが、首を左右にふった。

「いえ、ありません」
「そうか。リア、君もないんだな」
「えぇ、しかし、彼から感じるフォースは師の物と似ています」

 その言葉に、青年はきょとんとした表情を浮かべる。ジンさんはこちらを見て何かを思案し、立ち上がる。

「ここにいて話しても、埒が明かないな。リア、立ち上がれるか?」

 そう告げられて、立ち上がろうと力を込めるがぐらりと揺れる体。慌てたように支えてくれた青年に、ありがとう、と告げる。それを見たジンさんは、歩くのが難しいと見たのか私を抱き上げた。突然のことに驚いている私と青年をよそに、彼は歩き出す。

「おいて行くぞ、オビ=ワン」

 その言葉に、私は息を飲んだ。

夏の夜の夢


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