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 終わったのだと理解する。周りの喜びように、破壊されたそれに。様々なことに、終わったのだと。騒ぐ周りを引いた場所から見つめる。同じように離れた場所から見つめていたルークは、レイアによって中心部へ。私はそれを見て、もっと離れた場所に向かった。今はただ、静かな場所で過ごしたかった。騒ぐのもいいが、疲れてしまった体には騒がしいのがどうも辛い。
 木の陰で木にもたれて、空を見上げる。綺麗な星空である。幾つの星がこの争いによって消えたのだろう。光と闇。反するそれ、しかしながらも双子のようなそれ。光が膨れ上がれば闇は減り、そしていつかは闇が膨れ上がって光が減る。その繰り返し。永遠と。これからはしばらく光が膨れる。
 このままどこかに行ってしまおうか。地球はないのだろうか。いや、あったとしても元の世界とは限らない。ならば、ベンの家に戻ろうか。ベンがいなくなった今、あそこに住んでもきっと問題ないだろう。帝国軍に壊されていなければ、だけど。

「リア」
「マスター、」
「リアは加わらないのか?」
「騒がしいのがすこし苦手なんです」

 苦笑いしてマスターを見る。マスターはこちらを優しい笑みで見下ろしていた。手を伸ばしてみるけれど触れないそれに、なんとも言えなくなる。自分も彼と同じくフォースとなれば触れるんだろうかだなんて。

「これからはどうするんだ?」
「穏やかに暮らしたいです。あの家に戻って。周りはそれを許してはくれないでしょうね。しばらくは帝国軍の残党に降伏させるとか、不条理な扱いを受けていたそれらを助けるとか、忙しいでしょう」
「やるべきことが見えてるのはいいことだな」
「ねぇ、マスター」
「ん?」

 でかかった言葉を無理やり止める。一言でいいから褒めてくださいなどというのはおこがましい。ルークがヒーローで私は立役者でしかない。

「……これからは、ジェダイが増えるんですかね」
「あぁ、増やしてもらわなければな」
「大変そうだ、しばらくは物思いにふける時間もないかもしれない」
「リア」

 肩を竦めた私に、マスターはこちらをじっと見た。真剣な顔である。

「逃げてもいいんだぞ」
「――っ、」
「逃げてもいい。お前は疲れているだろう?ただ一人、ルークではないジェダイ。いや、『列記としたジェダイ』として扱われて、疲れているんだろう。人々の期待と、ジェダイとしての責任を背負った。そして、姉弟子としての責務も。十分すぎるそれだ」

 ゆっくりと頭を撫でられる感覚がする。

「だから、逃げてもいい」
「――」
「オビワン、何を言っているんじゃ」

 今更な言葉、だ。これがもっと前ならば、私はどうであっただろう。
 ふわり、と現れたマスター・ヨーダに、私は二人から目をそらす。マスターの柔らかい視線と、マスター・ヨーダの厳しい視線を感じる。無理やりに笑みを浮かべて、もう一度二人に向き合った。

「マスター、大丈夫ですよ。私が何年そういう環境にいたと思うんですか?確かに疲れてはいますが、大丈夫です。ご心配ありがとうございます」

 マスター・ヨーダの厳しい視線が消えて、マスターの柔らかな視線も消える。

「マスター・ヨーダ、彼女と二人になっても?」

 マスターの言葉に、マスター・ヨーダが柔らかな視線を残し消える。期待している、と言葉を残して。

「大丈夫ですよ、大丈夫なんです」

 顔がだんだん俯いていく。大丈夫、大丈夫、私はまだ大丈夫だと繰り返す。悲鳴を上げている体に心に言い聞かせるように。

「私は、大丈夫なんです。だから、貴方はルークの心配を、」
「リア、もういい。大丈夫じゃないんだろう。私は分かっている。リア、君は甘える相手がいなかった。私が消え、頼れる大人もいなかった。その中で、ルークに甘えられ、尚且つルークを導いてくれた。それだけで充分なんだ」
「大丈夫です、大丈夫なんです、お願いです、マスター。私を甘やかさないで、我慢できなくなってしまう」
「我慢しなくていい」
「そんなこと、言わないでっ」
「……リアはよくやった。さすが私の弟子だ」

 耳に蓋をしようとして、やめる。なんて言ったと、マスターを見上げれば、優しい笑みで。触れないのだけど私を抱きしめたマスターに、涙がボロボロと流れ出す。

「ます、たー」
「あぁ、」
「ます、たー、なんで、しんじゃったんですか。わたしをひとりにしないでください」
「すまない、」
「ますたー、」
「よくやったな、リア」
「ますたー、もうすこしだけ、こうしててください」
「あぁ、」
「もう、すこしだけ」

 目を伏せても止まらない涙に、マスターはただぎゅっと私を抱きしめる。疲れた、助けてと悲鳴をあげていた心は幾分か落ち着いてきていた。襲ってきた眠りに身を任せれば、心地よい風が頬を撫でる。おやすみ、リア。マスターの声を最後に眠りに落ちた。


似ているからこそわかる


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