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 悲しむ時間などない。悲しむ理由などない。マスターは、フォースとなってルークのそばにいるに違いないし、私はルークを先輩として導かなければならない。彼は主人公だ、今は悲しんでいたとしても、立ち直りそれを糧にして生きて行く。しかし、私は――。

「――眠れない」

 眉を潜めて、司令室の椅子に一人で腰掛ける。ルークやレイア、ハン達は寝てしまった。

「疲れてるのに、な」

 独り言をこぼしても、返答がないことぐらい分かっている。司令室から目を落とせば、忙しなく、しかしながら、少しの反乱軍が動いていた。もう直ぐで、一旦はあの大きな兵器を衛星を破壊できる。
 椅子にもたれて、目を瞑る。なんで、こうなったんだっけ。マスターについてきたからなのか、ルークがやってきたからか。私があの時にサンドピープルに撃ち殺されていれば巻き込まれなかった。そして、マスターとも出会わなかった。あの暖かな手はもう握ることはできない。

「――マスター、」

 ぽつり、と呟いてから、後悔する。今まで空虚でしかなかったそれが、どっと悲しみになって襲ってきたからだ。
 膝を抱えて、顔を伏せる。子供じゃないのにな、だなんて思うのに。ポロポロと涙が頬を伝って落ちていく。

「マスター、どうして、私を、置いていかないで」

 一人ぼっちで、何をすればいいのかわからない。導かなければならないが、私を導いてくれる人はいない。不安がどっと押しかけてくる。ジェダイがなんとかしてくれるという期待が責任となって押しつぶしてくる。右も左もわからない。気を許せる人なんて、弱音を吐ける人なんていない。

「……――弱音を吐いちゃ、いけないのにな。でも、少しだけ、泣かせてください。それが済めば、もう、泣かないから」

 ポロポロと流れる涙を拭ってくれる人などいない。マスターが生きていれば、慰めてくれただろう。ぎゅっと膝を抱えて、耐える。悲しみに重圧に責任に、逃げ出したくなるような期待に。
 不意に、カタンという音がして顔を上げる。そこにいたのはR2-D2だ。私は涙を無理やり拭って、なんでもないように彼(というのかはわからないが)をみた。

「どうしたんだ? R2-D2」

 近づいてきたR2-D2の言葉は理解できない。ただ、こちらを見上げてくるそれには幾分か心配が含まれている。

「私は大丈夫。少し、考えることがあって、ここにいただけだよ。さぁ、みんなのところへ戻ろうか。君は明日出撃するんだから、無理しちゃいけない」
「――」
「R2-D2?」

 戻ろうとした私を引き止めるかのように動いた彼に、苦笑いをする。

「本当に大丈夫だ、君はどうやら心配性らしい。これぐらいでへばってなんかいられないよ。だから、大丈夫。ありがとう、R2-D2」

 ぽん、とR2-D2の頭を撫でるようにする。

「私が泣いてちゃ、みんなが不安がるからね」

 くるりとローブを翻し、部屋から外へ向かう。まだ何かいっている彼に、おやすみ、と笑顔で告げてその場をあとにした。


空虚、もしくは悲哀


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