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 目が覚めたその場所は、まさしく砂漠だった。おかしい、私は都会のど真ん中にあるスターバックスで、キャラメルフラペチーノを飲んでいた筈なのに。日本に唯一と記憶している鳥取砂丘に来た記憶はない。ここはどこだ、ととりあえず体を起こすが足が砂に取られまともに動くことができない。
 景色だけじゃなく、体にも違和感を感じて体を見て見れば縮んでいる体に瞬きをした。そして、あぁ、夢か、と納得する。夢なんだろうが、喉の渇きを感じる。あたりに人はいないかと見たが人っ子一人いない。仕方が無いので、人里を目指してヨタヨタと砂漠を歩き始めた。


 数十分経った頃――いや、実際は数分かもしれないが――見かけた人影に手をふって見る。水を恵んでくれないだろうか、声をかけようとしたその時、人影はぐるりとこちらを見た。ガスマスクのようなそれをつけた人影は、こちらに気づくと何かを構える。それに驚き身を翻せば、チュインという音と共にそばにあった砂に何かがめり込んだ。

「嘘だ、」

 そう言葉をこぼしても、またチュインという音と共に何かがめり込み、悲鳴を上げる。遠ざかろうと、人影から背を向けるように走り出すが砂に足を取られて進まない。その間も、まるで遊ぶかのように人影は何かをこちらに撃ってくる。腕にかすったそれは痛く、夢だとかそういう考えは吹き飛んだ。

 ――このままじゃ、殺される。

 しかし、抵抗する手段などまるでない。逃げるしかないと砂場を走る、走る。幾分か走った後、たどり着いた岩場で後ろを振り返って見るが、やはりあの人影はいるし、心なしか人影は増えていた。隠れようかと思ったが、岩場の上にあった家のようなそれを見つけ、そちらへ向かって走り出した。

 やっとのことでたどり着いたそこで、また背後を振り返るがやはり人影はついて来ている。これで、この民家らしきものから出て来たのが、アレと同じなら、だなんて恐ろしい考えが浮かんだが、それを首を振ってかき消した。
 ドンドン、と扉を叩くが、何も返事はない。


「助けて、助けて!」

 掠れてしまった声でそう叫ぶけれど、中からはやはり何の返事もない。人がいないのかもしれないが、疲れ果てた小さな足では逃げることもできないし、人影はドンドンと近づいてくる。

「お願い、助けて!!誰か、助けて!!!」

 精一杯の声で叫ぶと共に、何かが肩を貫いた。肩が、燃えるように熱い。じわりじわりと痛んできた肩に、撃ち抜かれたのだと知る。
 ああ、死んでしまう。怖い、助けて。いろんな気持ちが渦巻いて、涙がボロボロと溢れてきた。

「お願い、誰か、助けて」

 呟くような言葉に、扉がガチャリと開いた。扉から顔を出した壮年の男性は私を見つけると目線を合わすように屈み込む。

「お願い、助けて、ください、なんでも、しますから、」

 壮年の男性は私を見て、後方にいる人影を見ると、何かガッテンが言ったらしい。私をやすやすと抱き上げ、家の中に入れると人影に威圧するように呟く。

「去れ」

 その一言に、人影が一目散に去るのが見えた。


「撃ち抜かれたのか、かわいそうに」

 そう言って私の肩を手当てする壮年の男性はとても優しかった。貴重であろう水を見も知らぬ私に分け与えてくれたし、こうして手当てをしてくれているのだから。

「お嬢さん、親はどうしたのかな?」

 男性の言葉にふるふると首を左右に振る。一緒にはいない。私の様子に壮年の男性は眉間にシワを寄せる。それがいたたまれなくなって私は俯いた。

「あの、ここは、どこなんでしょうか、」

 小さく呟いた私の言葉に、男性の手当てをする手が止まる。恐る恐る男性の顔を見れば、男性は何処か思案した様子である。

「……君の名は?」
「え?」
「私の名は、ベン=ケノービだ。君の名は?」
「……リア、です」

 そう告げれば、ベンと名乗った彼は何かに驚いた様子で私を見る。そして、私の頭を優しく撫でた
 ――これが、マスターと私の出会いである。


砂漠の真ん中で始まる


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