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あねかわがっせん・壱


 目の前で笑い転げる二人は、本当に仲がいいらしい。先程までは、敵同士かと思うほど真剣にやりあっていたのに、今はケラケラと笑いながらじゃれついていた。その様子はまるで子供のようである。某はそれを遠目で見つめていた。あそこまで信頼できる友垣がいて羨ましい、という気持ちもある。が、思い浮かべていたのは前の世のことだ。
 あの世界では、羽柴秀吉などという名前は聞かなかったが、あの世界の孫一と秀吉公も友人になっていそうな気がした。いや、聞かなかったというのは語弊だろう。秀吉公の名前が世に回っていた時には、私は多分病で伏していたか、死んでしまっていたのだから。

 ――あの人は、どうやって死んで行ったのだろう。

 もしかしたら、まだあの世界で生きているかもしれない。年をとって、別の女子を娶って――幸せに、自由気ままに、生きているのだろうか。

「某ー!こいよー!」

 某はぼう、としていたらしい。孫市と秀吉は肩を組みながら叫ぶ。某は慌てて孫市の元へかけた。
 秀吉は某を上から下まで見ると口を開く。

「えらく別嬪さんじゃ。あぁ、そんなに縮こまらんでええ、わしにそういう趣味はない」

 そういう趣味、とは間違いなく男色のことをさすんだろう。某は性別がばれていないことに、一息つく。

「で、孫市。この子は?」
「俺の小姓」
「はぁ!?小姓!?」
「色々あってな。その成りで銃の腕前はかなり優秀だぜ?」
「ほお、孫市が褒めるとは」
「名前は某ってんだ。よろしくしてやってくれ」
「名前まで女子みたいじゃな」
「女みたいだからって手を出すなよ?」
「だから、わしにそっちの趣味はないと……むしろ孫市、お前、そっちに走ったか?」
「走ってねぇよ。男とか普通になしだろ」

 わいわいと騒ぐ二人についていけず、小さくため息を零す。それに目ざとく気がついたらしい孫市が首を傾げたが、某はなんでもないと首を振る。

「某も戦えるんか?」
「おぅ、いい腕してるぜ」
「孫市が褒めるとは珍しい。まぁ、某もよろしく頼む」
「はい」

 某の返答に、秀吉は目を丸くした。

「声まで女子っぽいんか」

 その言葉に某と孫市が顔を合わせたのも仕方がない。

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