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NEVER DESPAIR:ULTIMATE

THE TRUTH
 ついたのは人気のない場所である僕はとりあえず、入口側にたっておく。緑谷君は僕と轟くんを交互で見た。

「えっと、」
「ごめんね、轟君。僕ちょっと用事があるから」
「――トニー・スタークにか?」

 その場を離れようとした僕に、轟くんがそう告げる。それに眉間に皺を寄せた。

「――そうだよ」
「え、えっと?」
「何かあったんだな」
「君たちに話すような内容じゃないけどね。とりあえず、いかないと」
「――ヒトトセ、お前は俺と似てる気がする」

 そう口を開いた轟くんは緑谷くんを見た。

「――緑谷、お前、オールマイトの隠し子か何かか?」

 そう告げた彼に僕は目を見開いた。ああ、でも、納得できる節はある。彼はオールマイトに目をかけられているのは確かだ。それに、彼の個性は確かにオールマイトに似たものがある。緑谷君は目を見開いて慌てて否定を始める。

「違うよ、それは……って言っても、もし本当にそれ……」

 そのままブツブツと言葉を投げかけた緑谷君は「そもそも逆を聞くけど、ヒロくんはともかく、なんで僕なんかに」と告げた。

「そんな言い方は少なくとも何かつながりがあるってことになるよ」

 僕の言葉に、轟くんは頷く。

「ああ、そうなる。俺の親父はエンテヴァー。知ってるだろう?」

 そう告げた彼に、日本のヒーローを思い出す。確か、燃焼系の個性の持ち主で――。

「万年No.2のヒーローだ。緑谷がNo.1ヒーローの何かを持ってるなら、ヒトトセが世界で『初めて』のヒーローの息子なら、俺はお前たちに勝たなきゃいけねぇ」

 そう告げた彼に僕はまた眉間に皺を寄せた。

「僕は僕だ、そこに父親は関係無い。君がそう思ってくれているのは嬉しいけどね」
「それはお前の考えであって、そこに周りの意思は反映されない。それはお前もよく知ってるだろ、ヒトトセ。あくまで周りは、俺をエンテヴァーの息子と見るように、お前を世界最初のヒーローであるトニー・スタークとあの『S.H.I.E.L.D.』の長官、ケイト・スタークの息子と見るんだ」
「――え?」
「――君って、中々火に油を注ぐなぁ。でも、それは君だってそうだ。だから君はこうして僕やオールマイトに近い緑谷君に話しかけてる」
「え、あ、ねぇ、二人共、なんの――」
「ああ、そうだ。俺の母親と父親は個性婚をした、といえばわかるか?」

 そう告げた彼に頷く。時たま起こるそれで、今もなお国や地域によっては問題視されることである。より強い個性を生み出すために、強い個性を持った人同士を掛けあわせるのだ。母さんも昔それをされそうになったが、度々父親が救っていたらしい。
 おそらく、エンテヴァーは自分じゃオールマイトに勝てないと思ったからそういう手段に出たんだろう。

「俺はあんな屑の道具にはならねぇ。記憶の中の母は何時も泣いている。『お前の左側がにくい』と母は俺に煮え湯を浴びせた……」
「……」
「ざっと話したが、オレがつっかかんのは見返すためだ。クソ親父の個性を使わなくたって、いや、使わずに一番になることでやつを完全否定する」

 轟くんの言葉に目を細める。

「同情するわけじゃないけど、わかるよ、その気持ち」
 ――僕がヒーローになりたいのと同じ理由だ。

 そう小さく呟けば、二人の視線が僕に向いた。

「ヒロくん?」
「僕はあの人の道具じゃない。所有物じゃない。だから、僕はヒーローになる」
「どういう――」
「不思議に思わないの? 僕は確かにあの二人の息子だ。でも、個性がオカシイって」

 そう言えば、二人はハッとしたような表情をした。

「確か、S.H.I.E.L.D.長官の個性は不老不死と、魔法みたいな――。でも、トニー・スタークの個性は不老不死ってことしかわかってないはず。トニー・スタークがヒロ君の能力に近いんじゃ――」
「違うよ。父親は確かに、不老不死だ。でも、完璧なそれじゃない。それに、父親はそれ以外の個性を持っているわけじゃない」
「待て。じゃあ、お前の個性は?」
「『百発百中』は、僕の本来の個性で『作り上げた』個性だ。僕の本来の個性は母親と一緒。――『現実改変(カオス・マジック)』なんだよ」

 二人は目を見開く。僕は拳を握った。

「危険な個性なのはわかってる。危険だからこそ、その代償は大きいし僕の体に掛かる負荷も大きい。父親は僕にコレを使わせたくない。だから、父親の監視が行き届くS.H.I.E.L.D.に入れたいんだ。僕のために、といってるけど、それは僕のためにじゃない。父親の都合だ。だから、僕はヒーローになる。僕は僕のものだから」
「でも、S.H.I.E.L.D.だって、凄い組織だよ! 世界中のヒーローの憧れだって言ってもいい!」
「緑谷君は、僕にずっと父親の敷いたレールにそって、何も考えずに生きろって言うの?」
「それは、」

 顔をうつむかせた緑谷君に、言い過ぎたな、と反省する。ううん、このカッとする癖をどうにかしないと。とりあえず、話を切り上げようと口を開こうとすれば、奥の廊下から靴音が響いた。

「だが、その割には、今回のチームは気に入ったように見える」

 現れたのは父親だ。目を見開いた二人と僕は対照的だろう。

「盗み聞き?」
「言い方が悪いな。お前の友達にお前の居場所を聞かれから探しただけだが? あのチームは動きやすかっただろう?」
「――それは否定しないよ。でも、あんなの卑怯だ」
「なら次を棄権するか? そうすればお前はアメリカ戻りだが」

 ポン、と轟くんと緑谷くんの頭を撫でた父親は僕を見下ろす。睨んだ僕に目を細めると、そのまままた歩き出す。

「黒髪の長い女の子がお前を探していたぞ、野郎は兎に角女の子は待たせるもんじゃない」
「――ご忠告どうも。じゃあ、さっさとその子の所まで行くよ。ごめんね、二人共。僕は梅雨ちゃんと御飯食べる約束してたの忘れてたから行くよ」

 二人にそう謝って、そのまま反対方向に進むよう足を進めた。
 ――ああ、もう、腹が立つ。
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