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NEVER DESPAIR:ULTIMATE

ZERO-BASED-2
 残り時間もきっと少なくなってきただろう。よし、っともう一度気合を入れなおして弓を構えた。
 その時である。ガクン、と大きく地面が揺れた。なんだ、とそちらを見れば大きな何かが見える。恐らくは、仮想敵だ。ポイントにはならない。この試験が始まる前にされた説明で言っていた「おじゃま虫」――ギミックなんだろう。
 視界の下で、多くの生徒が逃げていくのが見える。しかし、その大きな、いや、大きすぎる仮想敵はそれを追うように街を破壊して進んでいく。はて、このまま無視していても、このギミックが下の彼らを巻き込むのは目に見えている。ならば、できるだけ食い止めたほうがいいだろう。大きい仮想敵だが、恐らくは装甲が先ほどのものより硬い。ならば、急所を狙うべきだし、足を止めるのであれば足を破壊した方がいい。
 敵を見極める。恐らくは人間の膝に当たる場所がいいはずだ。背中のホルダーから、とっておきの矢を2本取り出して、弓を構えた。
 誰かが転けたのか「見捨てないで」という声が聞こえた気がする。下を向けば先ほどの女の子が助けに行くのが視界の端で見えた。矢を射って、もう2本同じ矢を構える。爆発するまでに時間が掛かるそれ。次は腕である。肘を狙って撃てば、足に刺さった矢が爆発した。ビルに向かって違う矢を放てば、そこからはロープが垂れる。

「とんで!」

 僕の言葉に女の子ははっとして、あの跳躍力で誰かを抱えたままそのロープを掴んだ。僕に気がついたんだろう仮想敵――それまで女の子を狙っていた仮想敵がむかってきたが、僕はそのまま弓を構える。

「ゲームセットにしよう」

 そうつぶやいて、矢を放つ。顔の部分に突き刺さるのと同時に、腕の装甲が剥がれ落ち、武装が解除された。弓をおろして、女の子に手を差し伸べる。抱えていた誰かを僕に差し出した彼女に、僕は誰か――恐らくは女の子――を引っ張りあげた。女の子はヒョイッとビルの上にまで上がってくる。とりあえず、恐怖からか放心状態のもう一人の女の子にポンっと頭をなでてみる。

「えーと、大丈夫?」

 放心状態なのか、頷きはしたが立てそうではない。ちらりと女の子を見たが、そちらは平気そうだ。

「また助かったわ、ありがとう」
「ううん、いいよ。こちらこそありがとう。僕だけじゃ、この子を助けられなかったし」
「それは私の言葉よ」
「終っ了〜〜!!!」

 そんな会話をしていれば、聞こえてきたプレゼントマイク――雄英の教員だ――の声に顔を見合わせる。

「終わったようね」
「そうだね。後は合格を神様に祈るだけかな。……大丈夫?歩けそう?」

 その問に首を左右に振ったもう一人の女の子にため息を付いて、抱き上げる。お姫様抱っこという形だが、まあ、我慢して欲しいところである。

「君は歩けるだろ?」
「ええ。私は蛙水梅雨っていうの。梅雨ちゃんと呼んで」
「合格するまで自己紹介はしないんじゃなかったっけ?」
「貴方は受かると思うから」
「だといいけど。……僕はヒロ。ヒトトセ ヒロ」
「ヒトトセちゃんね」
「ヒロでいいよ。ファミリーネームは慣れてないんだ」

 肩を竦めれば、蛙水さん――梅雨ちゃんは、ケロッといって「じゃあヒロくんね」といった。
 そう、思えばここから始まったのかもしれない。色々と。

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