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NEVER DESPAIR:ULTIMATE

CAVALRY BATTLE-1-

「騎馬戦かぁ」

 そう言って息を吐く。騎馬戦、となれば、四人1グループだったはずである。しかも、上位になれば成る程ポイントは変わってくる。ならば、これは個性とポイント――スタートダッシュのポイントの取り合いになるだろう。これは早くチームを見つけないと。そうと思っていれば、リグがやってきた。その後ろは苦笑いをしている帝江くんと、引きずられるように歩きながら抵抗する女の子がいる。そんなことを何も気にしていないリグは、よお、と僕に向かって手を挙げた。

「チーム組もうぜ、ヒロ」
「あれ? リグ、君、僕を負かすんじゃなかったの。あと、女の子放してあげなよ」
「あン? とりあえずの共闘ってト・コ・ロ! なぁ?」
「俺に聞かれても困るなぁ」

 そう帝江君に話を振ったリグに帝江君は苦笑いをした。僕はもう一度リグに声をかける。

「リグ、もう一回言うよ。その子、放してあげて」
「お前がチームに入るなら離す」
「……わかったから」

 そう言えば、リグは手を離す。きゃ!? と声を上げた女の子に、頭を抱えて、彼女に大丈夫? と声をかけた。彼女はハッとしたように僕を見上げる。心なしか赤い顔に首をかしげると、帝江くんが「ああそういうことかぁ」と笑った。そういうことかぁ、ってどういうことだろう。とりあえず、彼女に手を貸して起き上がらせると彼女は一歩ひいた。

「ヤッホイ、作戦会議しようぜ! どうする?」
「女の子が上の方がいいのかな? 俺は馬になるよ。そっちのほうがいい」
「ううん、取られにくさを考えると、リグが上だけど……というか、帝江君と君は何ができるの?」
「俺? 空気抵抗を操れる」
「デメリットは?」
「空気抵抗は減らせるけど、その分、摩擦熱は増える」
「空中じゃ君無敵じゃないか」
「そうでもないさ。服にだって摩擦熱は発生するだろう?」

 そう肩を竦めた帝江君にそれでも強い個性には変わらないと思う。僕の本来の個性ほどではないけれど。父さんが言っていたのは『程よい強さ』の個性だからだろうか。そのままその思考に入りそうになったので、慌てて思考を切り替える。女の子を見れば、女の子はハッとした。

「わ、わたしは、」

 そう言った女の子の耳にはスターク社のヘッドフォンがつけられている。それは限定モデルで、確か、ある一定の個性を持った人しか配られないそれだ。時たま、マニアやコレクターが欲しがることがあるが、恐らく学生が買えるものではない。ならば。

「――君の個性は集中聴覚?」
「え、あ、ちがうくて……」
「じゃあ、人の心を読めるのか」
「う、あ、はい、広範囲の人の心を読めます」
「イイ拾いもんだろ?」
「確かにね」

 リグの言葉に頷く。帝江くんが首を傾げた。

「なんでわかったんだ?」
「あのヘッドフォンはSTARK.INCのものなんだけど、ある一定の個性を持った人にしか配布されないんだ。音楽を聞くって言うより、個性をチューニングして防いでいるんだったかな。それが、集中聴覚、心読、気配察知、危機過敏のどれかだから。どの個性にしても騎馬戦に有利なのは間違いないからね」
「ふぅん……そんなものまで作っていたのか」
「普通は知らないと思うけどね。自分で制御すればいいからいらないって言えば次の年から送られてこない。でも、君のは最新型だ」
「あ、はい……えっと、」
「ああ、そういえば名前は?」

 そう首を傾げた帝江君に、彼女は「真詠アズサです。サポート科です」と告げた。

「俺は帝江タツ」
「僕はヒトトセ ヒロ。こっちはリグ」
「あ、はい、知ってます……」
「さっすがトニーサンの息子だよナァ、知名度高い」

 リグに裏拳をいれる。蹲ったリグに、彼女――真詠さんは首を振った。
「そうじゃなくて、あっと……受験の時は、お世話になりました」

 そう頭を下げた彼女に首を傾げる。そして、思い出す。僕がお姫様抱っこをした子だ!

「あの時の!」
「ううう、お姫様抱っこして助けられたの、私です……」

 目を逸らしながら告げた真詠さんに、しっくりとくる。ああ、だから既視感があったんだ!

「思い出話を話すのもいいけど、もうそろそろ十分立つ」
「私、騎馬でいいです。幾つかはサポート道具あるんですで足は引っ張らないかと……」
「そうか、君はサポート科かぁ」
「……オペレーターになりたいんだけどね」
 あんな学科だったなんて思いもしなかった。

 そう遠い目をした彼女に三人で顔を見合わせる。

「オペレーター、いいと思うよ。必要だし」
「ああ、警察や大きなヒーロー組織には必要不可欠だな」
「アンタの個性には向いてんじゃん? ってことでアンタは騎馬な。ヒロはどうする?」
「リグが上に行ったほうが反応は早い。僕の個性は上には向かない」
「りょ。俺が上行く」
「そう言えば、リグの個性は?」
「多分、この中じゃ一番戦闘向きってことが言えるかなぁ」

 僕の言葉にリグは肩を竦めた。「俺は実戦向きの実戦経験アリだからナ」と比較的まじめに告げたリグに二人は首を傾げた。

「15分たったわ。そろそろ開始しましょう」

 ミッドナイトの言葉に、全員で位置につく。その際、真詠さんが何かを僕らに渡した。

「コレ、」
「これは?」
「耳につけると、つけた人だけに小声でも声が届くの。あと、私からの情報発信が簡単になるから……声をかき消されても、困るでしょ?」

 そう言った彼女は何か靴のようなものを履く。それもそうだと僕らは頷いた。

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