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NEVER DESPAIR:ULTIMATE

FALL in FALL in

 私には、ヒーローが二人いる。

 一人目は、幼い頃に出会った人だ。
 昔、子供だった私は個性が制御できなくて、でも、親にもどうすることもできないそれに、家族全員で困ってしまった時があった。わんわんと泣くしかできない私に、時たまその場――大きなショッピングモールにいた人が私に声をかけたのだ。

「どうしたんだ?」

 それは『心』から私を心配する声で、私の目線まで屈んだその人は辺りを見渡した。そうして迷子だと判断した彼はもう一度私を見て、何かで私が違うともう一度『心のなか』で判断を下した。目を細めた彼は、「個性が制御できないんだな」と告げる。頷いた私に、彼は辺りをもう一度見渡し、私を見た。

「周りに変化はない、なら、見えない何か……人の気配か? 君は、人がどうなるかわかる?」
「ううん、」
「なら、遠くで何かが起こっているかわかる?」
「ううん、」
「……口に出されてないのに、人が喋っているよう?」

 その問いに私は頷く。彼はそういうことか、と『思う』と、何処までの範囲だ、と小さく呟く。

「わかんないの、でもね、たくさん、たくさんきこえるの」

 ポロポロとなく私に、彼は目を細めた。広範囲か、と『思った』彼はポケットから何かを取り出して私を見る。

「きみの名前は?」
「あずさ。まよみ、あずさ」
「あずさちゃん、か……しばらくこれをもってけばいい」

 そう言って彼は一つのバッチを渡す。なにか、地球儀のような鳥のようなマークの入ったソレにどうしたら良いかわからなくて私は彼を見上げた。彼は少し笑みを浮かべて、私にソレをつけた。
 その瞬間である。騒がしかった周りの音が止んだのは。

「今度、もっと君に合うものを贈ろう」

 目を白黒させる私に、彼はそう言って人混みの中に歩き出す。そのまま誰かと合流すると、私と同い年ぐらいの子供を抱き上げた彼。隣りにいた奥さんだろう女性は私を見て手を振った。それが一人目の私のヒーロー。


 二人目は――。

「ああ、今日もヒロくんかっこよかった、やばいなんであんなにかっこいいのかな」
 そう、この学校のヒーロー科の学生だ。
「でたよ、アズサの発作」
「仕方ないよ! ヒロくんかっこよかったんだよ!街をね、こう、忍者みたいに、ビューンって!」
 ダン! と机の上を叩いた私に友達はハイハイと受け流す。彼女はスターク社に出来た新しいブランドに夢中だ。なので、今も新しい情報を追いかけている最中である。いや、彼女だけでなく、このクラスの殆どがスターク社の新しいブランドに夢中だ。確か、STARK.Inc Avengers――アメコミのヒーローチーム名から取られたソレは私達と同い年の人によって作られたらしい。第二の天才だと皆は言っていたけれど。まぁ、私はあまり気にならない。私はそういう分野でヒーローをサポートしたいわけじゃないのだ。

 ――話はもとの、ヒロ君の話題に戻る。

「……途中で止まったと思ったら、ヒーロー科の女の子と話してたけど」
「ヒーロー科に行けばよかったじゃない」
「受験した! 落ちた! でも、ヒロくんに助けられた!」
「あー、そうだったわね。で、似合わないサポート科に来た」
「だってさぁ? ヒーローのサポートだと思ったんだよ、ほら、映画とかであるオペレータ的に、いまどこどこで事件が……っていうのをできると思ったんだよ!」
「調べなさいよ」
「余裕がなかったの! 期限が迫ってたの!」

 そう言って友達のスマホを取り上げる。あ、と呟いた友人にため息を吐いた。なんだよなんだよ。不服な私が口を開こうとした瞬間に、誰かが慌てたように入ってくる。

「おい、聞いたかよ! ヒーロー科にあのトニー・スタークの息子がいるらしいぜ!」

 そんな言葉に、周りは騒がしくなっていく。目の前の友人も目を大きく開けて、その話題に食いついていった。それを見て私はそっと息を吐いた。

「……私だけの秘密だったのになぁ」

 そう、あの二人の関係は、私だけの。

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