「うわぁ、すごいなぁ。爆豪くん」
そう呟いてしまうのは仕方がない。周りは僕らに敵対心を燃やしている。爆豪くんの選手宣誓が「俺が一位になる!」という宣言だったからだ。全体の宣誓ではなく、個人の宣誓であるが、アメリカじゃよくあることなので、どうってことはない。でも、向こうは「またなんかいってるぜ」というのりですむのだが、コチラはそうもいかないようだ。
チラチラと感じる視線に少し眉を跳ね上げる。ふと違う方を見れば、先ほどの帝江くんがいて、彼は僕の視線に気づいたのかひらりと手を振った。
「さーて、それじゃあ早速第一戦目に行きましょう。所謂予選よ」
そう告げたのは18禁ヒーローミッドナイトである。
……僕らはまだ18歳じゃないわけだけども、いいんだろうか。
と思ってしまったが、周りが何も言わないのでいいんだろう。僕が気にし過ぎなのかもしれない。
シャッフルされていた画面に映し出されるのは『障害物競走』という文字だ。
「計11クラスの総当りレースよ!コースはこのスタジアムの外周約4キロメートル!」
4キロなら、体力的には余裕である。
「我が校は自由さがウリ文句! うふふふ、コースさえ守れば何をしたって構わないわ!さぁさぁ、位置につきまくりなさい」
そう告げたミッドナイトに、全員が位置につく。狭いスタートゲート。おそらく、ここから予選は始まっている。僕の隣りに並んだのは、轟くんである。彼はチラリとこちらを見たため、僕も小声で彼に声をかけた。
「轟くん、ここはお互い妥協しない?」
「――妥協?」
「君、ここでふるいをかけるんだろう?」
「さぁな」
そうはぐらかせた彼に、まぁいいかと前を向く。前の信号がピカピカと光り始めた。
――3、2,1
「スタート!!」
その声に、僕はその場から飛び上がり、目の前の男子生徒の背中を蹴る。その瞬間凍りついた周りにやっぱりね、と告げて轟くんの後ろに並びでた。後ろからはリグの嬉しそうな声が聞こえる。うん、僕もここで振るいをかけておこう。リグよりもいい成績を維持しないといけない。嬉しいことに、今日は風が強いのだ。本来の個性を使えば、一位になることは容易いけれど、多分ソレをすればすぐにアメリカ送りである。近くにあった葉っぱを走りながら拾い、後ろの生徒たち全員の顔を見る。そして、葉を投げれば、その近くにあった葉もまきこんで後ろにいる生徒たちに襲いかかる。
「ごめんね、僕もまけれないから」
「お前の個性、そんなのだったか?」
「応用しただけだよ」
そう笑って、彼の妨害をしようとしたら目の前にあの仮想ヴィランが現れる。飛ばされた峰くんは大丈夫だろうか。さっさと仮想ヴィランを凍らしてしまった轟くんに、僕らの後ろから来ていた生徒は同じ道を通ろうとそこに足を進ませた。
「いかないほうがいいんじゃないかなぁ、」
そう苦笑いすれば、案の定凍りついた敵はバランスを崩す。
さて、僕もいかないとな。
――まず、的に当てるもの。それは僕の足だ。
安全に、攻撃を受けないルートを模索する。
――そして、的。それは。
「敵の体って、ね!」
そう大きく足を踏み出せば右足は敵の肩につく。その応用でぴょんぴょんと敵の上を進む。みえてきた轟くんの背中に、轟くんが目の前の仮想ヴィランを凍らせた。ううん、妨害が酷い。次に見えたのは崖だ。轟くんが氷で道を作ったのを見て羨ましいなぁ、と思う。やっぱり、何かを生み出せる能力は大きいと思うのだ。
「まぁ、おくれる訳にはいかないよね」
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