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NEVER DESPAIR:ULTIMATE

WOULD ONLY TAKE ME AS I AM-5
 それからは普通の授業でなにも変わらない。変わった、といえば、帰りだろうか。外にいるのはすごい数の生徒である。他のクラスや他の科の人達だろう。みんなの後ろからその様子を見れば、どうやらみんな体育祭にむけて敵情視察、のようだ。
 そんな中、誰かが男子生徒の頭に手を乗せ、一回転して女子生徒の上に着地する。潰れた女の子を気にもせず、その誰かは立ち上がった。周りは少し怖気づいたようだが、僕は慌てて目線を逸らす。そばにいた梅雨ちゃんが、ヒロくん?と首を傾げた。おーいたいた、と手を挙げたソレは口を開く。

「Tsup,ヒロ?」

 そして、冒頭に戻る、である。周りの視線がこちらに向き、とりあえず女の子に大丈夫か怪我がないか尋ねる。ブンブンと顔を左右に振った女の子からソレにめをうつし、そのまままた目を移す。

「さて、帰ろう、梅雨ちゃん」
「無視かよー、おーい?」
「ヒトトセくんの知り合い?」
「全然」

 尋ねてきた麗日さんにニコリと笑って否定する。

「お前、そういうところ、トニーさんにィッ!裏拳入ったァ……」
「ねぇ、リグ。君ってば、いつもいらないこと言うよね」
「ヒロくん、知り合いなのね、」

 梅雨ちゃんの言葉に息を吐く。

「僕の幼馴染。腐れ縁。僕はよろしくしたくない人」
「お前俺に対してツンツンしすぎだろ。ま、1番はトニーサァッ」
「君って懲りないよね」
「ありがとう」

  僕とリグのやり取りにブフォっと麗日さんが笑う。笑の沸点が弱いとは聞いていたけど、ここまでとは。

「ヒトトセくんの知り合いってことは、留学生?」
「え! A組の留学生アイツかよ!ウチと変えてくれ!」

 そう言ったのはB組の生徒だろう。うん、よくわかる。

「いやーん、そんなこと言っちゃってぇ。おれのこと好きなくせにぃ」

 リグの言葉に周りにいたのであろうB組の生徒は全力でひいた。うん、わかるよ。
 緑谷くんが「デットプールみたいな人だね」と苦笑いをする。うん、確かにデットプールだ。

「……まぁ、タスキーの方が正確なんだけど」
「え?」
「で、リグ、何の用で日本に来たの?」
「アメリカ飽きた」
「嘘つけ」
「嘘だよ。お前を連れ戻しに決まってるだろJK。もしかして、聞いてない? 俺が来てるってナオミがとっくにいったと思ってた」
「……なんか聞いたような、聞いてないような。でも、僕は」
「お前に戻る気がなかろうが、日本でヒーローになりたいと思おうが、関係ないね。おれは上司の命令できてんの」

 上司?と首を傾げた周りに、僕はリグを見る。

「ねぇ、リグ。それは違う場所で話そう」
「嫌だね。めんどーじゃん?」
「リグ」
「お前のおとーさんの命令でね。体育祭で、俺がお前より上位の成績なら、アメリカ戻るから」
「ヒロくんのお父さん?」
「そ!コイツの父親は、トニー・すタァッ!……ちょ、本気で、なぐんなし……」

 蹲るリグを見て息を吐く。首をかしげるリグを見下ろす。

「リグのバカ」

 そう言って、人混みの中に足を踏み出せば人は勝手に避けてくれる。ヒソヒソと話される声に眉間に皺を寄せた。そして、もう一言、口を開く。

「リグの、本当に馬鹿」
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