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NEVER DESPAIR:ULTIMATE

RESCUE?-9
「うん? ヒトトセじゃねーか」
「! マイク先生!」
「どうしたんだ? こんな時間に外にいちゃ補導されちまうぜー!」

 その日の夜、である。どうしようもなく自分の不甲斐なさにイライラして寝付けないので、町中を走っているとマイク先生に呼び止められた。どうやらラジオの仕事の帰りらしい。ちょっとランニングを、といえば、あんなことがあったんだから今日は休め、と笑われる。

「その真面目さは、トニーさん似だな。理事長なら家で爆睡かます」
「……マイク先生は、僕を知ってるんですか?」
「あー、記憶に無いかもしれないが、俺とイレイザー・ヘッドはお前がこれくらいのガキの時にあってんぞ」
 だから、結構すぐ分かったし、苗字で分かった。

 幼少時に会っていたんだろうか。僕は首を傾げる。覚えてない。

「まぁ、覚えてないのはしかたないな。ガキってそういうもんだし」
「はぁ」
「ヒトトセはS.H.I.E.L.D.の隊員になる気はないのか?」
「ありません。僕はヒーローになりたい」
「S.H.I.E.L.D.だってヒーロー組織だろ?」
「そう、だけど」

 僕の言葉に、マイク先生は「まぁ、詳しくは聞かねぇよ。そういうのは同期と話すべき会話だろうしな」といって笑う。

「……どうやったら、父さんに認められるんだろう」
「認められる?」
「お前はヒーローに向いてないってずっと言われるんです」
「ふぅん、お前はトニーさんに認められたくてヒーローになりたいのか?」
「そんなこと!」
「なら、今の道をしっかり踏みしめるこった。ヒトトセが超えるべき壁は有名なあの『トニー・スターク』の『反対』。これ以上ない反対はないだろ! 例の言葉を言ってみろ!」
「Plus Ultra?」
「そう! 立ちふさがるなら、超えるしかない! そんなもんだぜ」

 ぐしゃぐしゃと僕の頭を撫でたマイク先生に、僕はくすっと笑う。なんだか、元気が出たような気がする。

「もうすぐで、テッペンだ。送ってやろうか!?」
「大丈夫です、ヒーロー志望がヒーローに送られるなんて失態したくない」
「そうか! 明日は1限から英語だからな、遅刻すんなよ!」
「はい。マイク先生、ありがとうございました」

 ぺこり、と礼をしてきた道を戻る。マイク先生が僕を見てなにかつぶやいたらしいけど、僕が知る由もなかった。
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