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NEVER DESPAIR:ULTIMATE

RESCUE?-3
  黒い霧が晴れたと思えば、何かの建物の上だ。ぐるりと辺りを見渡せば、下に噴水で先生が戦っているのが見える。これはいい場所に来たかもしれない。弓を手に持って、矢をそちらに構えて――辞めた。と、言うのも上から飛行系のヴィランが現れたからだ。
 「おいおい、一体だけかよ」だなんて言ったヴィランに弓を構える。

「ダッセェ。今時弓だってよ!」
「当たるわけないだろー? 坊ちゃん」
「当たったら捕まってやるよ」

 そんな言葉を吐くヴィランを鼻で笑ってしまったのは仕方がない。

「そっか。なら、捕まってよ」

 その言葉とともに矢を放った。



 息を吐いて弓をしまう。建物の下には、網に絡まったヴィランが見えた。僕の個性を知らないのなら、当たらない判定をされても仕方がないとは思うけども。ふくざつだなぁ、と眉を潜めてもう一度息を吐く。さて、相澤先生に手を貸したいところだけど、みんなの安全を守るためならこの施設外と連絡を取るべきだろう。
 この学校のセキュリティーは、父親が経営するスターク社が関わっている。13号先生が告げたウルトロンは、両親が持つ人工知能プログラムのひとつである。ウルトロンは確か学校のセキュリティーに関わっていたはずだ。この施設のセキュリティーがダウンしているとなれば、ウルトロンがシャットダウンされたかシステム干渉ができないかのどちらかだろう。
 ポケットの中からスマートフォンを取り出す。父親曰く『数年前の試作品』であるスマートフォンだ。ジャミングが関係ない独自の電波がどうとか、ナオミと父親が言っていたけど僕からすれば右から左である。行き過ぎた科学は苦手なんだってば。

「wakeup、ジャーヴィス」

 スマートフォンにそう言えば真っ暗な画面がテレビのスイッチをいれたように、電源が入る。

『ヒロ様、今は授業中では?』

 そう告げたのは、父親のサポートA.I.ジャーヴィスだ。

「あー、うん、学校の施設にヴィランが入って、ウルトロンのメインスイッチが落ちてるみたいなんだ。どうすればいい?」
『落ちている、ことはないと思います。恐らくブロックされてるのだと』
「ジャーヴィスがここのセキュリティープログラムにウルトロンを招くこととかできない?」
『試して――』
「おいおい、こんなガキに下の連中はヤラレタってか?」

 不意に背後から声がして、動きを止める。ガチャリ、と銃を装填したような音が聞こえた。ゆっくりと手をあげれば、持っていたスマートフォンが壊れた。流石に銃撃を食らうとは想定されてないらしい。
 チラリと背後を伺う。ヴィランが二人。恐らく片方は放出系の個性だ。もう片方は?と、いうか忍び寄ってきているのに気づかなかった。ゆっくりと振り返る。手を構えた派手な格好をしたヴィラン――恐らくこっちが放出系 ――と、地味な格好をしたヴィランがいる。

「しかも今時弓かよ。ダッセェ」
「無駄口を叩くな、サッサと殺そ」
「しゃーねーな、ほらよ!」

 そんな声と共に銃声がなる。軽く横にローリングしてそれをかわし、弓をホルスターから引き抜く。指先から弾が出た。と、いうことは、アイツは手から目を逸らさなければ。

「もう一人いるのをお忘れ?」

  背後から聞こえた声に、しまったと屈む。上を通った手に、屈んだまま蹴りを入れれば、ヴィランはガッと変な声を漏らした。

「俺から目を離したな?」

 そう告げたヴィランが放った射撃をかわしていく、が。
 急に来た浮遊感にしまった、と目を見開く。とっさのことで建物から出ていたポールを掴んだけれど、片手で全体重をささえている状態だ。
 ビルの上、すなわち、足をつけれる場所には限りがあるということだ。ヴィランが僕を除きこむ。終わりだな、なんて告げたヴィランは僕に向かって指を構えた。

「終わり? 違うな、はじまりだ」

 そんな声と共に、ガシャンという音が聞こえ、敵が僕を超えて吹っ飛んだ。そのまま落下したヴィラン二人は、木の上に落ちたらしい。ガサリなんていう音がした。ガシャンという音と共に、目の前には真っ赤なアーマーが現れた。赤とゴールドの塗装のそれは、僕もよく知っているアーマーだ。

『USJセキュリティー再起動中……ロック解除まで後10分……』

 施設内に響き渡る声に、アーマーを装着した人物は「ジャーヴィス手伝ってやれ、緊急事態だ。ケイトへの連絡も忘れるな」と告げる。そして、僕を見て一言。

「いつまでぶら下がっているつもりだ、ヒロ」

  顔の部分のアーマーが外れる。中にいたのは怪訝そうな顔をした父親だった。
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