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NEVER DESPAIR:ULTIMATE

BATTLE PRACTICE-2
「わーたーしーがー!!」

 大きな声が聞こえて、ガラリと扉が開く。

「普通にドアから来た!!」

 そう笑いながら入って来たのはオールマイト先生だ。日本において『平和の象徴』とされる彼は、アメリカでも有名である。なんというか、僕が言うのもおかしいけれどアメリカンな人だなと思いながら見つめる。わぁわぁと騒いでいる周りに、やっぱり人気も凄いんだな、と思いながら授業の説明を待った。

「ヒーロー基礎学! ヒーローの素地を作るため、様々な訓練を行う科目だ!!」
 単位数も最も多いぞ!

 そういったオールマイト先生はぐぐぐ、と体に力を込めてかがむ。そして、バッと僕らにカードのようなもの――BATTLE(戦闘)と書かれている――物を見せる。

「早速だが、今日はコレ! 戦闘訓練!!」

 その言葉に、周りが浮足立つのがわかった。やはり、ヒーロー=戦闘のイメージが強いからだろう。そしてそれにともなって、とオールマイトが何かリモコンのようなものを操作する。ガゴッという音とともに教室の壁から何かが現れた。

「入学前に送ってもらった『個性届け』と『要望』にそってあつらえた……戦闘服!!」

 その言葉に、クラスはわぁと沸いた。着替えたらグラウンドに集合だ、と告げればみんなは五月蝿いくらい大きな声で返事をする。僕も同じように返事をしてしまったのは仕方がない。だって、ナオミが作った戦闘服が楽しみなんだから。

 唐突だが、僕の母さんや父親もヒーローをしていた時期がある。それは昔のことなので、今知っている人は少ないかもしれないけれど。その時、母さんも父親もまるでコミックのような出で立ちだったらしい。写真で見る二人はとてもかっこよかった事を僕はよく覚えている。渡されたコスチュームを見て、「おお」と言葉を漏らしてしまった。古いコミックで僕の好きなヒーローのイイトコどりをしたようなそれだ。色は黒と紺。胸元と右腕に『STARK.Inc Avengers』と入っているのはナオミの宣言通りだ。僕が弓を使うことを想定して、腕は動かしやすいようになっているし、手袋にもすべり止めが施されている。顔を隠すためのフードに口や喉を守るためのマスク。全体的に露出が少ないのは安全面を考慮しているからだろう。ズボンには折りたたみ式の弓のホルダーがついているし、矢のホルダーも弓もコスチュームに馴染むようなものだ。うん、カッコイイ。

 全てを装着し終えて外へ出れば、まだ人は集まりきっていないようだ。軽く準備運動をしていれば、八百万さんがやってきた。しばらく八百万さんと談笑していると、がしょん、という音が聞こえてそちらを見る。アーマーのようなそれだ。誰だろうか、と首を傾げていれば、僕の視線に気づいたらしいその人物は近づいてきた。

「弓は危なくないのか?」
「あ、飯田くんだったのか。カッコイイアーマーだね」
「……会話が噛み合ってませんわ」

 八百万さんの冷静なツッコミに苦笑いをする。

「弓、か。危なくないよ。人にあんまり向けないし。むけても、この矢はギミックがあるから大丈夫だよ」
「中々考えられてるのだな。そう言えば、自己紹介をしてなかった。飯田天哉だ」
「ヒトトセ ヒロだよ。よろしくね」
「ヒトトセ?」
「そうだよ? どうかした?」
「いや、聞いたことのある苗字だと……ん!?そのスーツ、スターク製か!?」

 そういって近づいてきた飯田くんに、そうだよ、と言う。

「友達が働いてて――ていうか、今開発チーフをしてるらしいんだけど、新しい社内ブランドを立ち上げたんだって。その試作品というか、宣伝係みたいな感じ」
「だから『STARK.Inc Avengers』となってるのか」

 ふむ、と納得した飯田くんに僕も頷く。そこからは、STARK.Incの手がけたヒーローコスチュームについて話していればいつの間にか人は増えていたらしい。オールマイト先生が来ていたらしい。

「始めようか!!有精卵共!!!戦闘訓練のお時間だ!!!」

 その言葉とともに戦闘訓練は幕を開けたのだった。


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