「ヒロのヒーロースーツ、私が作ったんだけど、なんか改良点あったらいってね」
画面の向こうでそう言った親友に僕は顔を輝かせた。
徹夜明けなのか、ボサボサの髪。薄っすらと出来ている隈。ちゃんとすればそれなりに美人なのに残念な人だと称される彼女は紛れも無く僕の親友だ。
春、といえば日本において彼女の担当する分野の需要が増える季節だ。アメリカでは秋なんだけど。恐らく、それで徹夜が続いているんだろうと僕は推測する。
彼女の名前はナオミ。僕の小さい頃からの友人にして、親友。個性を持たない『無個性』といわれる分類である。でも、代わりにナオミには天才的な頭脳があるのだ。『The water that came from the same spring cannot be both pure and salt(天は二物を与えず)』というような感じだと僕はかってに思っている。……神様が二物を与えた結果が父親なんだけど。
世界最大規模であり、世界最初のヒーローサポート会社『STARK.Inc』で働く彼女は僕と同い年であるというのに開発チーフを任せられるほど凄い人間で、アメリカでは超有名ヒーローから直々に彼女の指名が来るほどだ。……ナオミは断っているけどね。そんな人物が僕のヒーロースーツを作ってくれたことに感謝する。
「で、やっぱりヒーローっていったらマークいるじゃん?」
「え?」
「ほら、スーパーマンとかさ胸元に大きくマーク入ってるじゃん?それを取り入れたかったんだけど、マーク内からとりあえず『STARK.Inc』のマークいれといたんだけど。宣伝にもなるし」
「大手なんだから宣伝する意味ないとおもうけど」
「ふふふ、甘いな。私はトニーさんから許可を得て『STARK.Inc Avengers』という社内ブランドを立ち上げたんだよ!」
ヒロがブランド最初の顧客だよ!
目をキラッキラに輝かせて告げたナオミに僕は凄いねと褒めるべきなのか迷う。だって、僕は宣伝塔にされたわけである。話を聞けば、雄英の体育祭などはテレビでも注目されるほどのものだ。きっとナオミは僕が活躍して目立つことを望んでいるに違いない。たしかに僕は活躍してはやくヒーローになることを望んでいるけど、どこかプレッシャーである。
「もう一人手がけようと思ったんだけどね。適当に作ったクソダッサイ案をもう提出しちゃってたみたいで」
「もう一人?」
「あれ? まだあってないの?」
そう首を傾げたナオミに僕も首を傾げる。僕の様子をみて彼女は面白そうに笑った。
「じゃあ、あってからのお楽しみだ。喜ぶよ」
「だれ?」
「だから、お楽しみだって。じゃあ、寝るわ!」
「ちょっとま、」
僕の呼びかけも虚しく画面がプツリと切れる。通信が切断されました、と表示された画面にため息を付いて僕はラップトップの電源を落とした。頭によぎった存在に、そんなわけないよね、と思いながら。
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画面の向こうでそう言った親友に僕は顔を輝かせた。
徹夜明けなのか、ボサボサの髪。薄っすらと出来ている隈。ちゃんとすればそれなりに美人なのに残念な人だと称される彼女は紛れも無く僕の親友だ。
春、といえば日本において彼女の担当する分野の需要が増える季節だ。アメリカでは秋なんだけど。恐らく、それで徹夜が続いているんだろうと僕は推測する。
彼女の名前はナオミ。僕の小さい頃からの友人にして、親友。個性を持たない『無個性』といわれる分類である。でも、代わりにナオミには天才的な頭脳があるのだ。『The water that came from the same spring cannot be both pure and salt(天は二物を与えず)』というような感じだと僕はかってに思っている。……神様が二物を与えた結果が父親なんだけど。
世界最大規模であり、世界最初のヒーローサポート会社『STARK.Inc』で働く彼女は僕と同い年であるというのに開発チーフを任せられるほど凄い人間で、アメリカでは超有名ヒーローから直々に彼女の指名が来るほどだ。……ナオミは断っているけどね。そんな人物が僕のヒーロースーツを作ってくれたことに感謝する。
「で、やっぱりヒーローっていったらマークいるじゃん?」
「え?」
「ほら、スーパーマンとかさ胸元に大きくマーク入ってるじゃん?それを取り入れたかったんだけど、マーク内からとりあえず『STARK.Inc』のマークいれといたんだけど。宣伝にもなるし」
「大手なんだから宣伝する意味ないとおもうけど」
「ふふふ、甘いな。私はトニーさんから許可を得て『STARK.Inc Avengers』という社内ブランドを立ち上げたんだよ!」
ヒロがブランド最初の顧客だよ!
目をキラッキラに輝かせて告げたナオミに僕は凄いねと褒めるべきなのか迷う。だって、僕は宣伝塔にされたわけである。話を聞けば、雄英の体育祭などはテレビでも注目されるほどのものだ。きっとナオミは僕が活躍して目立つことを望んでいるに違いない。たしかに僕は活躍してはやくヒーローになることを望んでいるけど、どこかプレッシャーである。
「もう一人手がけようと思ったんだけどね。適当に作ったクソダッサイ案をもう提出しちゃってたみたいで」
「もう一人?」
「あれ? まだあってないの?」
そう首を傾げたナオミに僕も首を傾げる。僕の様子をみて彼女は面白そうに笑った。
「じゃあ、あってからのお楽しみだ。喜ぶよ」
「だれ?」
「だから、お楽しみだって。じゃあ、寝るわ!」
「ちょっとま、」
僕の呼びかけも虚しく画面がプツリと切れる。通信が切断されました、と表示された画面にため息を付いて僕はラップトップの電源を落とした。頭によぎった存在に、そんなわけないよね、と思いながら。
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