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NEVER DESPAIR:ULTIMATE

PHYSICAL FITNESS TESTS-2
 個性把握テスト。それは、どうやら「個性を使っていい」体力テストらしい。体力テスト?と首を傾げた僕に、いつの間にか隣に来ていた梅雨ちゃんが、ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50メートル走、持久走、握力、反復横とび、上体起こし、長座体前屈の8つからなるテストのことよ、と教えてくれた。ふむ、ソフトボール投げは中々有利だろう。でも、本来の個性を使えば、全部一位になることはたやすい。ふむ、と考えていた僕を置いて、相澤先生は爆轟という男の子を呼んだ。どうやら例をあげてくれるらしい。死ねぇ!とまるで敵のような言葉を吐いて爆轟くんがボールを投げる。爆発音とともに飛んでいったボールは遥か先に落ちた。ソレを見て、全員がざわざわと騒ぎ出す。

「よし、トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し、除籍処分としよう」
「はぁぁ!?」
「生徒の如何は先生の自由。ようこそこれが雄英高校ヒーロー科だ」

 そう言って笑った先生は何処か楽しげである。入学式もガイダンスの出席も、先生の自由。そして、生徒の除籍も先生の自由らしい。ちょっと母さんを小一時間ほど問い詰めたくなる校風だ。いや、先生にまで適用させるってどうなのかと思うけど、きっと母さんは「そのほうが楽しいじゃん」とか言うに違いない。
 ――逆に、だ。母さんがこの相澤先生に――いや、他の先生にも、だろうが――そういう判断を任せているとも取れる。それだけ、母さんからの信頼もあるのだろう。それでもな、と渋っていれば、先生が「こっからが本番だ」と切り出した。Plus Ultra。この試練をどう乗り越えていくか、が、問題である。
 出席番号からして梅雨ちゃんが一番である。頑張れ、と念じながら見ていたら梅雨ちゃんははやかった。蛙のような走り方をしていたし、あの跳躍力をみるし、何か蛙に関係する能力なんだろうか。

「と、いうか、僕このまま行くとずっと最後じゃないか」
「そうね」

 梅雨ちゃんの言葉にため息を吐いて、準備をする。相澤先生が僕をまた見たけれど、何かあるんだろうか。これが理事長の息子か、とか、そんなことを思われているのかもしれない。鍛えてるとはいえ、さすがに梅雨ちゃんには叶いそうもない。いや、本来の個性を使えば……

「ヒトトセ」


 そんなことを考えていれば、先生から声がかかった。なんだろう、と首を傾げてそちらへ向かう。

「理事長からの伝言だ。『もしもボックスは故障に付き使用不可』」
「は?」

 固まった僕に、先生は顔をしかめる。恐らく先生も意味をわかっていない。もしもボックスは、僕の『個性』のアダ名だ。主に僕の家族と親友の間のみで伝わる言葉である。もちろん、青いドラちゃんが関係している。彼のひみつ道具の「もしもボックス」は僕の個性に似ていた。まぁ、僕の場合は「有料版もしもボックス」だけど。
 ――個性を使うな。
 母さんはそう言いたいに違いない。もしかしたら、母さんの変な力で個性を利用できないかもしれない。悶々と考える僕に、「ヒトトセ」、と先生が口を開く。

「なんですか?」
「俺はお前があの人の息子だろうが、優遇はしない。それがあの人から頼まれたことだからだ」

 恐らくは、母さんが頼んだことなんだろう。僕だって、母さんの息子だから優遇されたいとは思わない。頷く僕に、先生はまた口を開いた。

「ただ、――アイツの言葉に従うのは癪だが――アイツの息子だということで、冷遇はさせてもらう」
「は!?」
「『俺の息子がお前のクラスになったら冷遇して除籍させてもいい』」
「まさか」
「文句なら父親に言え。ヒトトセ、お前は、クラスの平均以下なら除籍な」

 そう言って手をヒラヒラとさせた先生に、僕は唖然とする。父さんとも知り合いだなんて聞いていないし、なんていう待遇だろうか。というか、あの人は何勝手なことを言っているんだろうか。むしろ、先生がアイツというときに嫌悪感丸出しだったけれど、何か意味があるんだろうか。呆然とする僕を、先生が、はよ、と急かす。慌てて顔をふり、スタート位置についた。
 50m走の結果は、6秒とちょっとだった。死ぬかと思った。
 それから、握力、立ち幅跳び、反復横跳びが続いた。どれも、平均より少し上ぐらいだろうか。このままじゃヤバイ、と焦る僕に梅雨ちゃんが首を傾げた。

「どうしたの?」
「うーん、なんかね。先生と僕の父親が知りあいみたいで、父親のせいで平均以下なら除籍になるって……」
「冗談ではなく?」
「たぶんね、目が本気だった」

 そんな会話をしながら僕の番を待つ。第五種目ボール投げの順番待ちである。ちなみに記録トップは麗日さんで『無限』という数値を叩き出した。僕も無限になるだろうか、と考えを巡らす。ちらり、と視界に写った太陽に、なるほど、と理解する。太陽を的にすればきっと同じ記録が出るだろう。緑谷くんが、なにか悲痛な面持ちでボール投げへと向かっていく。個性を使う、と思えば、そんなこともなくボールは46メートル付近で落下した。首を傾げた僕に、梅雨ちゃんが「先生の個性みたいね」という。どうやら先生は抹消ヒーロー・イレイザーヘッドらしい。見ただけで個性を消せるなんて、強い個性だ。僕の個性とどちらが強いのだろう。緑谷くんは先生となにか話している。僕みたいに脅されているんだろうか。そして、緑谷くんの第二投である。遠くに飛んでいったボールに「おお〜」と歓声を上げてしまった。でも、彼の指を見れば腫れ上がっている。痛そうだ。

「痛そうだね。対価が凄いのかな」
「なんだか制御できてないみたいにもみえるわ」
「うーん、この年で?最近発生するってこともこの年じゃないだろうし……」

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