幼馴染シック


俺と音無は幼馴染だ。
小さい時から一緒にいた。
幼稚園から小学校、中学、そして高校も。

前々からそういう節はあったのだが最近は特に音無がもてている。必要にされているという感じで。
音無は真面目だし優しいし頼りにされる事が多い。
そのため周りからのお誘いも多く俺は幼馴染と一緒にいられる時間が減り、ある意味での幼馴染シックなのだ。
俺のほうが長くいるのに。面白くない。

「ねぇ、音無くん、今週の日曜日ウチらとカラオケいかない?」

ほらまた。
――ちょうど人募集してたんだよねー。
なんて楽しそうに言っている。

「あぁ、その日か? だったら……」
「音無ー? その日って俺が先に約束してたじゃん。早くもボケてきたかー? てことだからその日は音無いけないから。また別の日誘ってやって? あ、良かったら俺も誘ってくれよな?」

じゃーな、また明日っ!
そう言った後、音無の腕をつかんでドアの方へ向かう。

後ろの席からは―日向くんってかっこいいのにいっつも音無くんと一緒だよね。
わかるわかるー。
ていうか音無くんもそこそこいけてるのにあんまり目立たない感じだもんね。もったいない。―女子の談笑が聞こえてくる。

「おい日向、俺約束なんてしてたか? どうしてあんな嘘言うんだ? もしかして……。お前も女子とカラオケ、行きたかったのかー?」
僻み、かっこ悪いぞ…なんてニヤニヤ顔で。

「……音無ってば幼馴染の俺を差し置いて他の女子と仲良くするなんてさいてー」
最後は冗談めかして言うが、今のは本心でもある。

流石に自分でもやりすぎ感は否めない。
音無を独占されている感じが嫌だとしてもこれじゃあ…。
これじゃあ幼馴染だから、の一言で片付かないレベルまできてしまっている。


「それにしても日向、最近俺に構いすぎじゃないか? そんな事してるから女子からお誘いがこないんだぞ?」
「んなこたぁ、分かってるっての……。でも今俺、音無くんシックですから。音無クンと一緒に居たいの」

「なっ、なに言ってんだ、日向くんは……」
少し赤くなりながらいうものだからつい、俺の意地悪センサーが発動。
「なぁ、音無ー。そんな音無くん不足の俺の気持ちくらいわかってくれよー?」
わざとらしく言う。
「わかんねーよ……。もうそういうの止めろって。……照れるだろ?」
少し困ったように笑われる。そういうことするから…。 
「音無くんってばそんなんで照れちゃって……。なに? もしかして俺のこと好きなの?」
「……」
「……」
「……」
沈黙。この間に耐えられずに口を開く…。
「…音無くんー? マジに」
うけとらなくていいぜ。言い終える前に

「あぁ、そうだよ。日向のこと好きだけど」

は…? え。えっ!?

「…友達として?」
「……日向がそう思うならそれでいいけど。俺は……」
それもあるけど、そうは思ってない。
言うが早いか俺の横を早足で歩いたかと思うと下足室の方向へダッシュしていった。

……え?今、なん、て?
そうは思ってない?
てことは……。
……。

やっと気づいた。
幼馴染として?他の人からのお誘いが面白くない?音無くんシック?
どれもこれも本当は…。

俺はなにを勘違いしてたんだ。
俺は…。俺は……。

その瞬間俺の足は下足室に向かい動いていた。


階段を降り、職員室の前を通り、全速力で幼馴染を追いかける。
職員室が会議中だなんて知らない。

大きな足音をたて、息を切らして下足室までたどり着く。
靴箱なんかは目に入らず上履きのまま外へ飛び出す。
そのまま幼馴染の姿を探し走り続ける。

やっと後ろ頭が見えた。
お互いの距離はぐんぐん近くなって行く。そして、
「はぁっ………はぁっ……。音無……、俺、やっと気づいた。俺、お前のこと……」
「っ、日向……」
「俺、ずっとお前が他のやつに取られてて面白くないって思ってて、それは幼馴染だから。そう思ってた。でもさっきの音無のお陰でようやく自分の気持ちに気づけた…」
「…日向…」
「俺、音無のこと、幼馴染としてじゃなく恋愛対象として…好きだ」
「…日向。…………俺も」

―これからは幼馴染としてじゃなく恋人として、音無クンを独占できそうだ。





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