ガルデモライブ2
「それじゃあ、今回は特別ゲストを紹介します!」
ノリの良さげな曲を2、3曲歌ったあとユイはそう言うと舞台袖にいる俺を引っ張り出して来て、――何人居るのだろうかとてもでは無いが数えられないほどの――大勢の客の前でこう言い放った。
「特別ゲストの……音無ちゃんです!! ユイの先輩サンです!」
ガルデモのライブのチラシを貼るのを手伝ってくれた人だよー。とかそんな感じの話をしている様だった。帰りたい戻りたい穴があったら入りたい….。
顔を見られたくないのと、客を見たくないのとで下を向いていると。
「音無ちゃん、挨拶おねがいしまぁす」
とてつもなく楽しそうな声で言うユイ。
こちらにマイクを近づけてくる。
無理だから。ただでさえこんな格好なのに。
「できないって。無理だって。今からでもいいから考え直そう、な、ユイ?」
はじめに言っておくが、俺は小声で言った。つもりだったのだが、このマイクはだいぶ音を拾うらしい、はっきりとではないが俺の声――『できないっ…。無理…って。今からでも……なおそ、な、ユイ』――を拾っていた。
その瞬間。
今まで盛り上がっていた生徒たちが一斉に静かになった。生徒たちだけでなくテンションがあがりっぱなしだったユイを含むガルデモメンバーも。辺りは一瞬にして静まり返った。
……あぁ、やっちまった。
そんな考えが頭をよぎった。
…次の瞬間。
ガルデモのライブが始まった時の様な歓声に思わず耳を塞いだ。
「………! きゃああああ、かわいいですセンパイっ!」
俺には何がかわいいのか分からなかった。
そしてそのまま観客のざわめきは収まらず今回のライブは終了した。
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