期待


※時間感覚がなぜかあります、エイプリルフールネタ


SSSの作成会議も終わり、夕食も食べ終えあとは寮に帰るだけ。寮につくまでの短い時間。

「…なぁ、日向」
「ん? なんだ?」
「なぁ……。俺さ、日向のこと好きなんだ」
「あっ!? いや、まぁ、俺も好きだけどさ……んーと、あのさ、音無。それまじでいってんのか?」
「あぁ、まじもなにも大まじ」
「なっ……! 嘘、だろ?」
戸惑った様子で手をわたわた上下させている。

――やっぱり、そうだよな。
ないとはわかっていても、うまくいくはずがないと思っていても心の何処かでは、少しいい返事を期待していたことが今になってはっきりとわかる。
いくら今日がエイプリルフールだから、寮までの短い時間なら、気持ちが伝わらなくても傷つかないですむ…もし傷ついてもすぐに帰るだけ。なんて浅はかな考えでこんなこと言わない方が良かったかな…。

これ以上日向に嫌われたくない。

「…日向。今日ってなんの日だっけ?」
だから、その時のために用意していた台詞を言う。
「今日……?イマイチ曖昧だけど四月の一日くらいか……? ってあれ? 四月の一日…!? ……あ、そっか、だよなー…一瞬どきっとしたぜ」
そういって、よくも騙してくれたな。といつもの空気に戻る。よかった。すぐにこういう風に戻れて。

「…でもホントそうだよな、俺がお前好きっておかしいよな……」
自分に言い聞かせる意味も込めてつぶやく。
「いや、嫌じゃ…ないけどさ……。むしろ嬉しいけど」

そんなこと言われたら……また期待してしまう。今の親友という関係を壊したくないのに。
これ以上期待させられたら…困る。


「なぁっ、もう種明かしはしたぞ?
……日向も俺を騙したいのはわかるけど、時間はあけたほうがいいんじゃない…」

…か。と言いきる前に。


「そっ、そういうわけじゃねーけどよ……別に騙すつもりじゃない。でもさ…そんなこと言われると…ちょい照れる」

え……?なっ、え。
…日向は何処までも俺を喜ばせる。

「ひ、日向……? 今の…?」
「…!? あぁああうわぁ! いま俺なんてことを!? わぁああー!」
うずくまりながらそういう日向の耳は赤い。つられて俺まで赤くなっている気がする。
「おま、耳赤いぞ……?」
もしかしてもしかしたら。
「うわぁああ! んなこと分かってるってのっ! そ、そんなこというなよ! 恥ずかしいだろ!」
いじめっこか!お前はぁあ!と叫ぶ日向。

「……」
「……」
お互いが耳が赤いまま沈黙。
きっと時間じゃあ三十秒くらいだろうけど長く感じた。その上顔まであつくなっていってるし……。
思わず横目で日向を見やる。
と、目があった。
すぐに視線をそらせるのに、どうしてなのか俺だけじゃなく日向までもじぃっと見つめてくる。
その三秒後。はっっと何かに気づいたように日向は顔をそむけた。さらに耳が赤くなっている。まるでお互いりんごのようで。

「…なぁ、さっきのって…。もしかして……まじで…」
口火を切ったのは日向。
「……、あぁ、ほんとだよ」
―もし俺を騙しているとしたら、それは大成功だな。―
期待なんてとっくにしていないはずだったのに、なのに。
「なぁーんだ、じゃあ両想いってことか?
ははっ 笑える」


もしかしたらあの出来事が嘘なんじゃないかと疑うくらい次の日は普通に校長室に行き、作成を考えて、ご飯を食べて。そしてまた二人きり。
「なぁ昨日の…ほんとに嘘じゃないよな…」
「…なにいってんだ、当たり前だろ?」
そういうも実は内心が少し不安なこともまた事実だ。
「…ほんとなんだよな、嬉しい」
その一言だけで心の中の不安も飛んで行っているような気がする。
「あぁ、俺も」
そして、お互いどちらからともなく笑いあった。



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