「明日は各自、新たな作戦を考える日にするわ! たまには各自で考えたほうがいい案が出るかもしれないからね」

そう言って、さっさっとゆりは部屋から出ていった。

「そんな事言われても……」
急にそんなこと言われても困るんだが……。
「さっっすがゆりっぺ!! ナイスアイデア!」
目を輝かせつつ叫びはじめる野田。
「野田はそれでいいけど俺はどうしたら……」
「なら、俺と考えるかー?」
後ろからにょきっと出てきた日向が言う。
「日向と一緒に……? 変な作戦考えんなよ?」
「そりゃあ、俺はあほかも知れないけどな、一応俺だってちゃんと真面目に変じゃない作戦、考えるっての」
「そうか?」
「おうともよ、任せとけって。じゃあ、明日屋上あたりで考えようぜ。じゃ、また明日」

そう、約束を取り付けて日向も部屋から出ていった。
日向と考えるか……。

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「……で、案を考えるんじゃなかったのか?」
今俺達は特にすることもなく校内をうろついていた。
「まぁまぁ、そういうなって。休みなんかそうそう貰えねーぞ?」
「休みって……。結局考える気は無いのかよ」
まぁ、考えた所でまともな案はでないと思うけど。
天使が天使じゃないって分かってからは平和なもんだしな。


「んー。そろそろ腹減ったな。食堂でも行くか?」
だらだらしてても腹は減るしな。
「そうだな。まぁ、食べた後に案は考えたら……」
「って結局考えんの!?」
一応は。

「なぁーに食べよっかな」
券売機の前で考える日向。
「んー。俺はこのA定食っていうやつで」
「あっ! 音無先にきめんなよ〜。ずるいぞー」
「ずるくねぇよ。それとも日向も同じのが良かったのか?」
「いや、そうじゃないけど……」
と、こんな感じでメニューを決めかねていた。このままだと並んでる人が困るだけだ……。
誰か待っていないのか?
そんな思いから後ろを振り向くと
「って直井。お前も食堂か?」
直井がいた。
うつむいて何やらぶつぶついっている。
「この声は……!? 音無さん!? 音無さんと逢えるなんて!」
言いながらすごい勢いで腰に抱きついてくる。
額を押しながら離れるよういうがぎゅうぎゅうひっついてくる。
「俺とあえて嬉しいのもわかるけど、ちょっとは離れろって……」
なお離れない直井を、日向はぐいっと俺から離す。
「直井も食堂かー? 元生徒会であり神であるお前が食堂なんか使ってもいいのか?」
「神である僕と音無さんと一緒に居られるだけでもありがたいと思え!」
「食堂のことは無視かよ……」
「そ れ で ー。音無さんはどうしたんですか? もしかして僕を探しに来てくれたんですか?」
ころっと、態度を変える直井。
「なんでそんな考えに至るんだ。ほら、昨日ゆりが言ってただろ? 案を考えようとしてたんだが……」
「流石音無さん! しっかり案を考えていたんですね! かくいう僕もですけど!」
再び抱きつきにアタックしてくる。
「あー、そうだ。このままでもあれだし、よかったら一緒に食べるか? 直井」
そう言うと直井は目をぱちぱちっと瞬かせるときらきらした目で俺を見てくる。
そんなきらきらした目で見られても。「音無さん! 音無さんからのお誘いとは! ぜひ、ぜひ! 食べましょう! 断る理由なんかないですぅ!」
「おーーい! 俺のこと忘れてないか? 直井、音無は俺と食べる約束してたんだぞ? それを後からきたお前が一緒って、駄目だ、却下! てことで音無はもらってくわ。んじゃ!」
言うが早いか日向は俺の手を引くと、走りだした。

「えっ、えっ! ちょっと待ってください! 音無さん! そんな愚民いや、洗濯ばさみ以下の下等生物から離れて僕と……! ちょ、音無さん!!!」
後ろからそんな声が聞こえてきたぞ、日向。

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食堂から走りだしてから、俺たちははじめのように校内をぐるぐる回っている。
「で、結局何も食べてないんだが。それと……あの……」
「ん? どうかしたか?」
「いや……あの……なんでもないっ」
「あー。まぁ俺と居るってことがおいしいじゃん!」
自信満々に答える日向。
「何言ってんだこいつ」
「いや、食事がおいしいと、俺がおいしいという2つの意味をだな……「あぁーっ! 先輩たち何やってるんですかぁっ!」」
「げっ、ユイ! こんなとこで何やってんだ!!」
「せっかくの休みなので校内散策をしていたんですけど……。特にやることもなく暇してたんですよ〜! そしたら先輩たちにあったんですよ〜!」
似たようなことを先に聞いた気がするな……。
「そーかそーか……。分かったから耳元で大声出すなっつの!」
「照れないでくださいよー先輩っ! というか、先輩ってばもしかしてデートですかぁ? ホントはこれなんじゃないですかぁ? 手つないで……! 先輩にもようやく春が来たんですか?」
「……っ! うっせーよ! ほっとけ!」
そうなのだ。 
先程から気になっていたこと……。
なぜか日向は走っている最中に手をつないできた。
「日向、手、離せって……」
恥ずかしい。手をつなぐことですら恥ずかしいのに、それなのによりによって日向と。そんで、ゆいにも見つかってるし。
ついうつむいてしまう。片方の腕で顔を覆いつつ、手を離せという意味でつないでる方の腕を上にあげる。
「ん、あぁ……」
そういって日向は手を離す……
かと思ったんだが……離さない。
「おいっ日向?」
黙ったままぴくりとも動く気配なし。
すると、
「……あーっと! やっぱり離さないことにしました! 音無くんがあまりにもかわいいから!」
「はぁぁ……!? 恥ずかしいから早く離せよっ……!」
「きゃああっ! 先輩たちのピンクオーラが眩しいですっ! もしかしてもしかしてもう二人はオトナな関係……! 付き合ったりしてるんじゃないですかー?」
「「んな訳ねーだろっ!!」」
「そのわりにはハモるんですねっ。あぁっ! こんなところにゆいがいるから、お二人とも肯定できないんですね! それじゃあピンクオーラをふりまくお二人のお邪魔はできないので、これで失礼しますねっ〜。それではっ!」
……ユイはものすごい速さで走り去っていった。
「行っちゃったけど……」
「あぁ」
「いや、さらっと一件落着みたいな顔してるけど手! 手離せ!」
手が汗ばんでいくのがわかる。
このままだと俺が……日向のこと……好きなことが伝わりそうで。

「いやー、まぁ、うん」
何渋ってんだ!!
「いやいやいや離せっての!」
「なぁ、……そんな俺と手繋ぐのイヤか?」
「はぁっ!? なに言ってんだ日向!」
…嫌っていうかどっちかっていうと恥ずかしい。その……日向とだし。
でも、そんなことはもちろん言えるはずがあるわけも無く
「……あー、まぁ、いやではないかな……うん」
こう言ってしまった。
「お前それってマジでいってんのか?」
しまった。嫌じゃないっていうのも、普通はおかしい応えかもしれない!
「……そうだけど」
「ふ〜ん。じゃあ音無がさっき下むいてたのは照れてたってことか〜」
ふっふーん♪とか、今にも言い出しそうな顔で言ってくる。
「は!? なっっ……! そんなこと……!」
「じゃあなおさら離せないなぁぁ」
にやにやしやがって。
「お前どういうことだよっ! ていうか、さっきから楽しんでないかっ!?」
「そうか? じゃあ……離してやらないこともないかな〜」
と言って日向はぱっと手を離す。
「はぁ、やっと離れたか。ホントなんでこんな……ってうわぁぁぁ!」

「なにしてんだよ!」
日向に抱きしめられてる。
離れたと思ったらこれか。
人をそんなに困らせたいのか。
日向は冗談のつもりでも俺はちょっと困る。
つい、顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。
「んー? 直井の真似ってとこかなー」
「なっっ……。なんでこんなことするんだよ。冗談キツイぞ? そろそろこれって言われても仕方が無いぞ?」
冗談だ、冗談だ。と言い聞かせても、頬の紅潮は止まらない。それに気づいているのかいないのか、日向の顔が近づいてくるのが分かる。

「まだ気づかない……ってか?」
「な、どういう意味だよ……」
俺がどんな気持ちかも知らずに……。

「まじでわかんない? ならもうしばらくこのままかな」
「……なんだよ、それ……」
少し期待してしまう自分がいた。


しばらくそうしていただろうか。
やっと日向は俺を開放してくれる気になったのだろう、俺から離れた。
もう赤くなっていることなんかは、バレバレだろう。

そして、繋がっていた手から先程の暖かさを感じなくなった。
と思ったのと同時に
「俺はこんなに音無のこと好きなのにな」
そう日向は小さな声で呟いていた。

「えっ…」
それは、ぎりぎりで俺が認識できるほどの声だった。

[newpage]

「で、結局案を考えてないのはあなた達だけなんだけど? どういうことか説明してくれる?」

ゆりっぺがせっかく素敵な案を考えているというのに!と野田は日向に向かってハルバートをかまえている。

「ゆり! これには深いわけがっ……ちょっとたんま! 野田!こっちにハルバートむけんなって! 音無もなんか言ってくれよ!」

「あー!! それなら私わかりますよっ! 昨日その二人ずぅっと手をつないで、いっっちゃいっちゃ、いっちゃいっちゃしてたんですよ! しかも、もうオトナな関係ですっ!!」
「話を難しくするな!」

「なんだって! 音無さんどういうことですか!? こんな洗濯ばさみ以下の愚民と!?」
「直井も乗ってくるなぁ!」

「いや、まぁ、まちがってないけど……」
「音無まで俺を裏切りやがったぁ!?」

「どういうことですかぁぁぁああああ!? 音無さん!」
「直井はちょっとだまれぇえ」

「えっとだな……。そのー、俺と日向は昨日オトナな関係に……」
「お願いだから、音無、お前が一番黙っててくれぇ!」




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