waiting for


「旦那まだかなァー…」

主が不在の部屋で机に頬杖をついているのはデイダラ。単独任務に出ている相方の帰りを待っていた。彼の前には待ち時間の産物であるいくつもの粘土たち。その数の多さが彼のやり過ごした時間の長さを物語っている。そのうち特に気合いを入れて作ったと思われるひとつを手に取り、少し手直しを加えた。出来映えを眺めては芸術だな、うんうん。などと呟いている。
ふと彼が時計を見るとすっかり日付が変わってしまっていた。さすがの彼でもネタが尽きたようで途端に睡魔が襲ってくる。

「旦那遅いなぁ、うん…。オイラもう寝ちまうぞ…」

そう独り言を言いながら机に突っ伏す。その後ろ姿は寂しいと言って憚らないように見えた。柄にもなく感傷的になっているようだ。

「早く帰ってこいよ…」

もう一度例の創作物を掴み取り、じっと見つめる。彼はいつの間にかそれを丁寧に着色していた。待ち人の姿を思い浮かべてはため息をついたり、欠伸をしては寝たフリをしてみたり。そのうちに邪魔になったのかおもむろに額当てを取った。
突如部屋の戸が開けられた。驚いて見遣るとそこには紛れもなくこの部屋の主が立っていた。

「旦那っ…!」

「俺の部屋で何してる」

「あ、いや、旦那を待ってて…」

待ち人のご帰還に咲くような明るい笑顔を見せたのも束の間、相方の怪訝な顔にデイダラの表情も曇っていく。

「旦那の物には触れてねぇし、ただちょっと場所は借りてたけど、ほんとに待ってただけで…」

「わざわざ此処でか?」

「あ、まぁな…。帰ってきたらすぐ分かるだろ?」

彼はひどくばつが悪そうに話した。まるで怒られて言い訳をする子供のように。

「じゃあオイラ、部屋に戻るから…」

言いながら机に並べられた粘土たちを片付ける。デイダラが色までつけたお気に入りに手を伸ばしたところ、サソリに名を呼ばれた。

「デイダラ」

「何だよ…ってうわっ!」

腕を引かれて、思いの外、強く抱き締められる。突然の事でデイダラはすっかり固まってしまい、されるがままであった。サソリの顔が近い。お互いの鼻先が触れてしまいそうなその距離にデイダラの顔が染まっていく。キスでもしてしまいそうな雰囲気だ。デイダラは思わず目を閉じた。−コツン。彼が期待した所ではなく、剥き出しになっていた額にサソリの額が触れた。

「…ただいま」

「あ、あぁ…おかえり」

額をくっつけたまま平凡なやりとりをする。だが二人にとっては慣れない挨拶。少しぎこちなさが残る。先に静寂を破ったのはサソリだった。

「これは貰ってくぜ?」

「あ、それは…」

サソリの手にはデイダラの"お気に入り"が。二頭身程にデフォルメされた人型粘土、主に赤と黒で塗られたそれは…

(オイラの作った旦那人形…)

「…全然似てないな」

「なっ…!よく出来てるだろが!」

サソリはそれをまじまじと眺めながら唇の端だけで笑ってみせた。表情以上に心のうちでは余程嬉しかったのか、その丸みを帯びた輪郭を指先でなぞるとそっと机の上に置き直した。

「次からはお前がこんなヘンテコ作らねぇうちに帰らないとな」

「え…」

デイダラは言葉の意味を理解するやいなや急いでサソリから目を逸らした。伏し目がちに俯いた彼は少し泣いているようだった。

















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デイさんは旦那に対してのみ女子も羨む可愛さを発揮します。日頃の好戦的なデイさんはどこへやら。

ということでお前ら末永く結婚しろ!


2012/12/11


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