20121108

※学パロの番外編のようなものです。






(あと5分…!)

先刻から落ち着かない様子で部屋の中を歩き回るのは、最近親友であるサソリに彼女ができてご機嫌ななめなデイダラだ。彼はどうやら時間を気にしているようで、チラチラとデジタル時計の画面へ視線を送っては、手の汗を拭ったり深呼吸をしたりしていた。彼の目的は、


「絶対オイラが一番におめでとうを言うんだ、うん」


明日はサソリの誕生日。デイダラの目論見を妨害する可能性のある人物、つまり彼のライバルは言わずもがな、サソリの彼女であるサクラだ。デイダラは沸々と闘志を燃やしていた。あと3分。デジタル時計の前に正座し、携帯電話を両手に握りしめ、全神経を集中させて日が変わる瞬間を待つ。

−よし、あと5秒!今だ!

デイダラは勢いよく発信のボタンを押した。すかさず携帯を耳に当てる。独特の電子音が何度か続く。

(繋がれ、繋がれ〜!)



『…もしもし』

「旦那っ!」

『何だよ…こんな時間に』

「旦那!誕生日おめでとう!」

『あ?あ、そうか。俺、誕生日か』

「そうだぜ、うん!旦那が生まれた大事な日なんだからちゃんと覚えとけよ!」

『お前はまた歯の浮くような台詞を…女じゃあるまいし、いちいち気にしてられるかよ』

「いいだろ別に!…ん?ってことは旦那もしかして…」

『何だよ』

「…旦那におめでとうって言ったのオイラが一番乗りか?うん?!」

『一番乗りって…。そりゃそうだろ。こんな時間にわざわざ電話してきて。それがどうかしたのか』


(ぃよっしゃあああああ!!)

デイダラは空いている方の手で大きくガッツポーズをした。思わず口元が緩む。

「や、別に!じゃあまた明日な!」

『変なやつ。じゃ、オヤスミ』

「お、おやすみ…!」


電話が切れた。目的を達成し、気が抜けたのか呆然と立ち尽くすデイダラ。電話越しのサソリとのやり取りを思い返す。

オヤスミ…。なんかこれ付き合ってるみたいじゃねぇ?
っておやすみぐらい言うだろ、うん!何舞い上がってんだよ!とにかく!一番におめでとうって言えてよかった…うん。

みるみるうちに頬が紅潮していく。本人も鏡を見ずとも分かったようだ。何ともいたたまれない気持ちになりデイダラは枕に顔を埋めた。


「ってオイラ何やってんだろ…」


これじゃあ旦那に恋してるみたいだ。別にそんなつもりは毛頭ないのに。

どうしたものか、と天井を見上げる。顔が熱い。ふと、机の上に置いてある包みが目に入った。薄い黄色の包装に赤いリボンで丁寧にラッピングされたこの代物は…

プレゼントまで用意してるけど、これはあくまで親友としてだからな、うん!

そう自分に言い聞かせるようにして眠りについたデイダラであった。







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