移りゆく僕らA


サソリの旦那とツーマンセルを組んでもう10年になる。最初の頃は旦那の足を引っ張ってばっかりだったが、ここ数年失敗はおろか、重要な単独任務を任されるほどになった。加えて最近、ずっと組織最年少だったオイラにも後輩ができた。…って言っても結局オイラが最年少なんだが。とにかくオイラは嬉しかった。忠実な部下を多く持つサソリの旦那にまた少し近づけたような気がしたからだ。

―いつだってオイラは旦那の背中を追いかけていた。




(くそっ…!)

腹が立つ。旦那が明日の任務を一人で行くなんて言い出したからだ。それが旦那なりの気遣いだって頭では分かってるが、まるでオイラなんていなくても平気だって言われてるようだ。オイラを突き放すようなその態度に腹が立つ。

(きっと旦那の本音なんだろうな…)


いつだってそうだ。オイラばかりが追いかけて。旦那の方からオイラを求めてくることはない。オイラは、必要とされてないんだ。

そう思うと余計に腹が立ってきて、目頭が熱くなった。

(何泣いてんだ!情けねぇ…!)

オイラは拳を握りしめ、頬を伝う涙を拭った。









「おーい、デイダラちゃーん!まだ寝てんのかぁ?」

部屋の外でバカでかい飛段の声がして目が覚めた。…!もうこんな時間かよ!昨日なかなか眠れなかったから…

「っていうか旦那は!?」

任務の時は大抵旦那がオイラを起こしに来る。旦那のヤロー、本当に一人で行きやがった!寝過ごしたオイラも悪いが、一言も声を掛けずに行っちまったのかよ!

「センパーイ、遅刻っスよー」


「…悪い、今行く。」

こうなったらオイラだって旦那なんかいなくても平気だって証明しなくちゃな。









「でよぉー!角都がさぁ…」
「もー飛段先輩、さっきから角都さんの話しかしてないっスよー」
「あ?いいじゃねぇか!ゲハハ!」
「…お前ら仲良いよな、うん」
「って先輩、なんか今日暗くないっスか?」
「そういえばいつもより口数少ねぇな。どーしたの?」
「別にー…」
「さては、サソリと喧嘩でもしたかぁー?」
「そんなんじゃねぇよ、うん……なぁ飛段」
「んー?」
「お前、角都に必要とされてる自信あるか?うん」
「あー?必要?そいつは角都に聞かねぇと分かんねぇけどよ、オレには角都が必要だぜー?」
「ふーん…」
「先輩には僕が必要ですよねーなんちゃって!」
「……」
「え、先輩?」
「……」
(ここはいつもみたいにツッコんでほしかったなぁ…)









(結局一日中旦那のこと考えて過ごしちまった…オイラ馬鹿だな…)

せっかく温泉まで行ったってのに、全く休まった気がしねぇ。それもこれも旦那のせいだ。

(あ…)

旦那は早々に任務を終え帰ってきていた。廊下の少し先でイタチと何やら楽しげに話してやがる。…ふざけんな。何でイタチなんだよ。


(置いて…いくなよ)


ひどく、旦那が遠く感じる。オイラには一生手の届かないような、ひどく遠い存在に。



「おい、デイダラ…」


旦那がオイラを呼ぶ声が届くより先に、オイラは自室へと駆け出し力任せにドアを閉めた。










――――――――――――

まだ続くんだってさ(゚言゚)←

相思相愛な芸コンちゃんが好きだが、すれ違いな芸コンが一番イメージに近いです。

トビの口調が黄瀬と被ってないか心配w


2012/09/30


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